昨日は気づかなかった。
蓋を開ける。
中に入っていたのは、
古いカセットテープだった。
ラベルには、
母の字で、
たった一言だけ書かれていた。
「○○へ」
僕の名前だった。
⸻⸻
家には古いカセットデッキが残っていた。
僕はテープを入れた。
再生ボタンを押す。
しばらく、
ザーッというノイズ。
そして、
母の声。
20年以上聞いていなかった声だった。
『もし、これをあなたが聞いているなら……』
僕は動けなくなった。
『たぶん、私はもういないと思います』
そこで、
母が少し黙った。
『あの人のことは、あなたには話さない方がいいと思っていました』
僕は測量士を見る。
測量士も黙って聞いている。
『あなたが家を出た後も、時々あの人は帰ってきました』
僕の背中に、
冷たいものが走った。
『でも、怖がらなくていい』
この話は怖かったですか?
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