もし、いつもの仕事帰りの深夜。
もし、あの男が逮捕されなければ、またどこかで遭遇していたら。
僕は今、こうしてテレビを見ていられただろうか。
僕はカーテンを閉めた。
あの日、僕が一番になろうとして少し早くゴミを捨てに行ったこと。
それが、僕と犯人が最後にすれ違った夜だった。
そして今でも、ときどき考える。
もしあの朝、ゴミ回収業者が袋の異変に気づいていなかったら。
もし防犯カメラの映像が残っていなかったら。
もし犯人が逮捕されるのが、あと一日遅れていたら。
あの男が向かっていた先は、
僕の家だったのかもしれない。
考えるたびに怖くなり、僕はすぐに引っ越した。
あの事件から十数年。
今でもあの街には行かない。行けない。
犯人が出所したかどうかも、調べない。
ただ一つだけ確かなのは、
あの夜から、僕は「深夜のゴミ捨て」を二度としなくなった。
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