昼休みに入ると、Bと待ち合わせた食堂に向かう。
食堂には、Bと一緒にもう一人女性がいた。Bの所属するサークルの2つ上の先輩という。
私は、昨日赤い服の双子と目が合ったこと、今日も交差点や教室の外から、赤い服の女が私を見ていたことを話した。
Bは「さすがに大学の中まで入ってきたら騒ぎになるでしょ」と信じていない様子だったが、意外なことに先輩は真剣に話を聞いてくれた。
「昔からの噂で、赤い服の双子を見た女の子が行方不明になることが何度かあったっていわれてて、地元民の間では本気で信じている人も多いんだよ」とのこと。
そのうえで、先輩が示した対策は現実的なものだった。
「本当にお化けということはないだろうけど、噂に乗っかった愉快犯や変質者の可能性もあるし、付きまとわられるようだったら警察に相談したほうがいいんじゃないかな」
私は先輩に礼を言うと、今日はこれ以上講義に出る気にもなれず、家に帰ることにした。Bも付き添ってくれた。
例の交差点の手前で迂回して路地に入ったが、路地の先の小さな個人商店、そのガラス戸に赤色が映った気がした。
思わず振り返ると、路地の入り口にあの女がいた。振り返った私を見てにんまりと笑う。その顔のまま、女が私に向かって走り出した。
細い肩を揺らし、赤いスカートを振り乱し、母親を見つけた子供のような笑顔で走り寄ってくる。
私はとっさに背を向けて逃げ出した。
「どうしたの?ねえ、まってよ!」Bの声が聞こえたが、振り向きもせずに走り続けた。どれだけ走ってもすぐ背後にあの赤い服の女がいる気がした。
アパートの前までたどり着いたところでやっと後ろを振り返る、赤い服の女の姿はなかったが、代わりに足はパンパンで肺が痛く、息も絶え絶えになっていた。
それでも何とか自分の部屋まで戻り、玄関のカギをかけると、そのまま床に崩れ落ちた。
しばらくうずくまっていたが、ピンポーンとチャイムの音が鳴った。
びくっとしたがインターフォンのモニターを見るとBだった。
Bを部屋に上げると「ほんとにどうしちゃったの?大丈夫?」と泣きそうな顔だった。
赤い服の女に追いかけられたと話すと、Bはそんな女いなかったとのこと。
「一度病院に行こう?一緒に行ってあげるから」とBは言う。Bが私の見たものを信じていないのは残念だったが、本気で心配してくれているのは分かった。
それに私も、自分が見たものが全て本当だったのか自信がない。
昨日見た双子は本物だったとしても、それ以降は自分の過剰な恐れが生み出す幻だったのだろうか。
Bはこれから出ないといけない講義があるが、そのあと戻ってくるから一緒に病院に行こうと言った。
私も頷いてBを見送った。
Bを部屋で待つ間もずっと落ち着かなかった。
どこかで、あの赤い服の女がこの部屋を見張っている気がする。
そんな状況でも尿意は感じる。用を足して、意味もなく閉じていたトイレの扉の錠を開けようと、手を伸ばした瞬間、扉の外からミシっと音がした。
手を止めて数秒間息をひそめていたが、よくある家鳴りだと思いなおし、錠を開けた瞬間、ドアが勢いよく開いた。
トイレの外に、赤い服の女が立っていた。私を見て、顔をしわくちゃにして笑う。
私は悲鳴を上げて後ずさるが、トイレの中にそんなスペースはなく、便座につまずくように座り込む。女が背をかがめて笑顔を近づける。拒絶するために突き出した私の手を、女が握りしめた。手を握られた瞬間、なぜか抵抗する気持ちがすべて抜け落ちてしまった。それどころか母に手を握られているような安心感を感じる。
私は女が手を引くままに、家の外に連れていかれた。

























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