「忘れ物。」
私は反射的に振り向きそうになった。
だが祖母はずっと前を歩いている。
じゃあ、この声は誰だ。
心臓が激しく鳴る。
私は目を閉じ、そのまま歩き続けた。
すると今度は、小さな子どもの声。
「待って。」
老人の声。
「一人だけ連れていこう。」
女の声。
「こっちを見て。」
声はどんどん増え、まるで何十人もの人間が私の後ろを歩いているようだった。
ようやく駐車場に着いた。
祖母が私の顔を見るなり、青ざめた。
「……振り向かなかったね?」
「うん。」
祖母は安心したようにうなずいた。
「それなら大丈夫。」
その言葉に胸をなで下ろした。
家へ帰る途中、スマートフォンが震えた。
誰からでもない通知。
そこには写真が一枚だけ表示されていた。
今日のお墓参りの写真だった。
親戚全員が並んで写っている。
祖父の墓の前で笑っている。
だが、私の後ろにだけ、一人の老人が立っていた。
白い着物を着て、私の肩に手を置いている。
誰も気づかなかったらしい。
私は慌てて写真を拡大した。
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