祖父が亡くなって三回忌を迎えた夏。
親戚が集まり、みんなでお墓参りに行くことになった。
墓地は山の中腹にあり、昼間でも木々が陽を遮って薄暗い。
線香に火をつけ、花を供え、手を合わせる。
帰ろうとしたとき、祖母が言った。
「帰るときは、絶対に後ろを振り向いちゃいけないよ。」
昔からの言い伝えらしい。
「帰る人を、あの世の人が呼ぶからね。」
私は笑って聞き流した。
墓地を下り始める。
砂利を踏む音。
セミの鳴き声。
その中に混じって、誰かの足音が聞こえた。
ジャリ。
ジャリ。
ジャリ。
家族は前を歩いている。
なのに、足音は私の真後ろから聞こえてくる。
立ち止まると、足音も止まる。
歩き出すと、また聞こえる。
ジャリ。
ジャリ。
ジャリ。
祖母の言葉を思い出した。
振り向いてはいけない。
私は前だけを見て歩き続けた。
墓地の出口まであと少し。
突然、耳元で声がした。
「ねえ。」
祖母の声だった。
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