俺にはちょっと変な趣味があった。
その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出て、
そこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。
いつもとは違う、静まり返った街を観察するのが楽しい。
遠くに見える大きな給水タンクとか、酔っ払いを乗せて
坂道を登っていくタクシーとか、
ぽつんと佇む、まぶしい自動販売機なんかを見ていると、妙にワクワクしてくる。
俺の家の西側には長い坂道があって、それがまっすぐ俺の家の方に向って下ってくる。
だから屋上から西側に目をやれば、その坂道の全体を
正面から視界に納めることが出来るようになってるわけね。
その坂道の脇に設置されてる自動販売機を双眼鏡で見ながら、
「あ、大きな蛾が飛んでるな~」
なんて思っていたら、坂道の一番上のほうから、
物凄い勢いで下ってくる奴がいた。
「なんだ?」と思って双眼鏡で見てみたら、
全裸でガリガリに痩せた子供みたいな奴が、
満面の笑みを浮かべながらこっちに手を振りつつ、猛スピードで走ってくる。
奴は明らかにこっちの存在に気付いているし、俺と目も合いっ放しだ。
ちょっとの間あっけに取られて呆然と眺めていたけど、
この話は怖かったですか?
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ただの子供か幽霊か