高校を卒業してから、私は一度も父に電話をしていなかった。
仲が悪かったわけではない。
ただ、連絡する理由がなかった。
それだけだった。
大学に進学し、就職し、恋人ができて別れ、また仕事に追われる。
気づけば七年が過ぎていた。
父からは時々メッセージが来た。
「元気か」
「寒くなったな」
「仕事は順調か」
短い文ばかりだった。
だが返さない。
忙しいから。
あとで返そうと思うから。
返すほどの内容でもないから。
理由はいくらでもあった。
父も追い打ちをかけるような人ではなかった。
返信がなくても、一か月後にはまた短いメッセージを送ってきた。
そして私はまた既読だけつけた。
ある日。
仕事中に母から電話が来た。
父が倒れたという。
病院へ向かった時には、もう意識がなかった。
脳出血だった。
医師は首を横に振った。
私は父の手を握った。
冷たかった。
何か話しかけようとした。
でも何も浮かばなかった。
最後の会話が思い出せない。
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