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呪い・祟り

山科文字さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

殺したい人、いるー?
長編 2026/07/04 21:35 330view

A先輩と喫茶店で会ってから3日後、A先輩の家の最寄駅に向かうため、レンタカーを走らす。時刻は21:00。あの日と同じじめっとした空気が充満していた。

駅のロータリーに着くと、白のキャミソールを着たA先輩がバス停のベンチに座っていた。遠くから見るとまるでヤジロベエのようにユラユラしている。片手にはストロングゼロロング缶。ベンチに置かれたコンビニ袋には同じようなロング缶がぎっちり詰められている。
A先輩は免許を持っていないため、ここから目的地までは俺の運転だが、なんともまあ自由な人だと思った。ベンチ近くにレンタカーを停めて、窓からA先輩を呼ぶ。
「あ〜、〇〇君!運転ご苦労様ですぅ!」
酔っ払って赤ら顔のA先輩が、ふざけたようにこちらに敬礼する。
「先輩、飲むのはいいですけど、絶対車で吐かないでくださいね」
「大丈夫、大丈夫、私お酒強いから〜」
とヘロヘロのA先輩が車に乗り込んでくる。
俺は乗り込んだA先輩に確認のため、ナビの行き先を確認してもらう。
「うん、ここここ。ここで合ってるよ〜」

現在地から目的地までの所要時間は、約2時間。ちょっとした長旅になるが、0時までには間に合う計算だ。俺はA先輩がシートベルトをしたことを確認し、車を走らせた。

車内でのA先輩は饒舌で、最近あったくだらないことを脈絡なしに話しては1人で爆笑している。俺も相槌を打ちながら、「この人、もしかしたら今日死ぬかもしれないんだよな…」などと思っていた。
A先輩がしゃべり疲れて、何本目かわからないロング缶のプルタブを開けた頃、俺は前々から聞きたかったことを聞こうと思った。
「A先輩はなんで、人を呪い殺す方法とか、呪いの証明とかを実証したいんですか?」
「えー、それ聞いちゃう?だってさあ…」
A先輩はわざとらしく口を尖らせる。
「生きててもなーんにも楽しくないんだもん。私、人の気持ちとかわかんないから、いっつも他の人イラつかせてるだけだし、いるだけで迷惑っていうか」
「だから、私、もう普通の世界に疲れちゃった。」
ハンドルに手を離さずに横目でちらっと盗み見た先輩は、どこか遠い目をしていた。たぶん今まで言われたこととかを思い出しているのだろう。
「そういえば、なーんにも大学生らしいことしてこなかったなあ……ねえ、」 

急に、A先輩が俺の耳に口を近づけて囁く。
「もしさー、今日、私が生きてたら、エッチしようよ」
A先輩を見ると、にやけながらもこちらを試すようにじっと見ている。
「じゃあ、絶対相手には呪い死んでもらわないとですね」
と返すと、A先輩は声を上げて笑っていた。

11:30。途中、コンビニに寄ったりしたので結構ギリギリな時間に、俺たちは目的地に到着した。目の前にはとうの昔に潰れたホテルがある。
廃ホテルは想像以上に山の中にあった。周囲を照らすものはなく、暗い夜の中で一層濃く闇を落としているそれは、ただそこにあるだけで威圧感があった。
五階以上はありそうな大きさで、入り口には「立ち入り禁止」や権利者関係の文言が書かれた看板が掲げられている。そこかしこが壊されており、廃ホテルを囲むように設置されているフェンスも意味をなしていなかった。

A先輩は、レンタカーの後部座席からスマホを置くための三脚と懐中電灯を持って降りてきた。
光量の大きいライトであったため、辺りを広く見回せる。俺は先輩からライトを受け取って、ホテルに向かって歩いた。
周囲は大勢の虫の音と、風が木々を揺らす音で騒がしく、普段の生活とはかけ離れた状況であることから先輩も俺も圧倒されて無言だった。
廃ホテルへと歩き出した時、先輩が小さく「こわ…」と呟いて腕を絡ませてきたので、正直俺も怖かったこともあり、腕を組んだまま破れたフェンスをくぐって、廃ホテルの中へと入っていった。

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