時刻 午前0時
場所 〇〇県〇〇市〇〇-〇〇 〇〇ホテル地下一階男子トイレ-椅子
持ち物 相手の髪の毛
とだけ書かれていた。
「あと、メッセージで来たんだけど、この呪いがうまくいかなかった場合は、呪いをかけた私が死ぬらしいよ」
終始、冗談のように話すA先輩が、そこで話を区切って俺の目をじっと見てくる。
「私は呪いが本当にあるって証明したいの。でも、私が死んじゃったら意味がない。だから、〇〇君に一緒に来て、観測と記録をしてほしいの。」
「もし、その場で何も起こらなかったら呪いが成功したか、そもそも詐欺だって話。でも、もし私が呪い殺されるんなら、それを君にカメラで撮って欲しくて。記録されないことも考えて、君もその場にいて欲しい。」
「いや、それ俺も呪い殺されるんじゃないんですか?」
「同伴者が死ぬとはいってなかったよ。1人でやれとも言われてないし。でも危険だとは思う。その上で、さっきの質問に答えて欲しいの。」
「……殺したい人、いるー?」
その時の俺の頭には、元カノの顔が浮かんでいた。元カノと別れた原因は、相手の浮気。
俺は元カノをあらゆる言葉で罵った。徹底的に、目の前の人物を壊してしまいたかった。声を上げて泣き喚き、俺に許しを乞うてくることを期待した。
しかし、元カノは何も言わなかった。
その目には、何の感情も読み取れない。
ひとしきり俺が怒鳴り散らした後、元カノは冷たく
「そういうとこ」
とだけ言って、合鍵を置いて出ていった。その時、俺はただただ自分が惨めで、全てがどうでも良く感じていた。
喫茶店にいる今もそうだ。全てがどうでも良い。ただ、殺したい相手、と言われれば、俺の頭には元カノの顔しか浮かばなかった。
「……います」
小さく呟いた俺に、A先輩が顔を輝かせる。ほんとに空気読まないよなこの人、と心の中で舌打ちする。
「それは、私の話を聞いた上で、それでも殺したいってことで、いい、よね?」
若干上目遣いのA先輩に、心の中が冷えていくのがわかる。
「……はい。」
A先輩が小さくガッツポーズをする。
俺は、そんなA先輩を見て、
「元カノじゃなくて、こいつが死んでも良いな」と思った。
家に帰った俺は、洗面台に置かれたヘアブラシを手に取っていた。
俺は普段ブラシを使わない。つまり、このヘアブラシに絡まっている髪は、元カノの髪ということになる。
しかし、万が一にも俺の髪が混じっていてはいけないので、ブラシから丁寧に一本ずつ抜いて、並べていく。
15本ほどの茶色の毛髪が机に並べられている。元カノは髪を茶色に染めていたので、この髪は元カノのもので間違いない。
俺は、百均で買った小さいジップロックに髪の束を折りたたむようにして入れた。




























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