「あ、優斗、おはよー 昨日のあれ見た?」
「・・・いや」
「どうしたんだよー 何か怒ってる?」
「・・・いや、別に」
明らかに様子がおかしい。
学校に着いても誰とも話さず、自分の席で物思いに耽っている。
やがてチャイムが鳴り、朝の会が始まった。
僕たちはそこで桃野先生から、衝撃の事実が告げられる。
「来月から、優斗くんが「しずくの家」に移動することが決まりました。」
目の前が真っ白になった。
「もうすぐに移ろいの式が控えているため、優斗くんと過ごせる時間は1週間と少ししかありません。
でも、ひろみちゃんの時にも言ったようにーーー」
その後の言葉は、全く頭に入ってこなかった。
その日は一日中、ずーっと上の空だった。
ずーっと、優斗と話したことや、一緒にゲームをしたこと、喧嘩をしたこと、いろんなことを思い出していた。
「楓くん、寂しいだろうけど、気を強く持ってね」
「何かあったらいつでも相談するんだぞ」
教師たちの言葉も、穴が開いた僕の心をただ虚しく吹き抜けていくだけだった。
放課後、僕は優斗とよく遊んでいた公園に立ち寄った。
これから、優斗は「しずくの家」に行って、カタツムリになって、僕のことなんて全部忘れて、それから・・・
一匹の巨大なカタツムリが、ベンチで呆然と座っている僕をフェンス越しに見下ろしていた。
翌日からは、僕は努めて優斗に明るく接するようにした。
僕だってとても辛いけど、優斗はもっと辛いはずなんだ。
自分が優斗の手を取って、自分が優斗に寄り添ってあげないとダメなんだ。
昨晩自室でじっくりと考えてようやく、それが自分にとって、優斗にとって最善であるという当たり前のことを、当たり前のこととして受け入れることができた。
学校に行くときに、休み時間に、給食の時間に、僕はひたすら優斗に話しかけた。
いくらつれない返事が返ってこようとも。
いつかはまた前のように接してくれると信じて、優斗を元気づけようとした。
そんな帰り道。
「大体カタツムリになったって死ぬわけじゃないんだから、そんなに落ち込むなよ。
確かにもう会えなくなるのは寂しいけど・・・
先生もカタツムリになることは決して悲しいことじゃないって言ってたしさ」
僕は空元気で話しかける。



























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