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妖怪・風習・伝奇

焦慮バッタさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

大きなカタツムリ
長編 2026/07/02 18:31 591view

7.
桜が舞い散る中、真新しい制服に包まれた僕は中学校の校門を出る。
僕が優斗と最後に仲直りした日、そして優斗と話した最後の日からちょうど1年が経っていた。
通っていた小学校の前を通り過ぎて、思い出の道を沿うように歩く。
日に日に遠くなっていく日々を噛みしめるように。
気づけば、家に着いていた。
家に入ると、母が台所で洗い物をしていた。
母は僕を見るなり、洗剤の泡が着いたままの手でこちらに駆け寄る。
「楓、13歳の誕生日、今度の日曜日だね。
 おじいちゃんとおばあちゃんも呼んで、みんなでお祝いしようね。

 お寿司もチキンも大きなケーキも予約しといたからね!」
この話を聞くのも今月に入って何回目だろう。
普段は大人しい母がこれだけ浮かれてしまうほど、13歳の誕生日というのは大きな意味があるのだ。
僕は適当に相槌を打って2階に上がり、自分の部屋に入った。

前向きに生きていかなければならないと思い始めていた。
優斗がカタツムリになってから、他の級友たちにも背を向け続け、卒業までほとんど誰とも話さなかった。
好きだったゲームもやらなくなった。
この1年間、ただただ生き残った自分を罰するかのように生きてきた。
しかし、それこそが、優斗がカタツムリになった出来事をさらに残酷なものにしているのを自分でもよく分かっていた。
こんな救いのない世界に少しでも抵抗するためにも、前を向かなければいけない。

まず、日曜日の誕生日会は、精一杯楽しんでみよう。
そしてこれからはちゃんと新しい友達を作ろう。
部活にも入って、熱中できることを見つけてみよう。
そして死んだら、優斗に会って、いっぱい楽しかったことを話そう。
優斗もカタツムリなんかにならずに、こっちにいればよかったのにって、また2人で笑い合おう。
カタツムリになろうとも、死んでからいくところは同じだろう、きっと。
そう思うと、なぜだか涙が出てきた。
この1年間たくさん流した、悲痛に満ちた涙とは違う、午後の陽だまりのような、暖かな涙だった。
今までは辛くて見れなかった、遠足で優斗と2人で写っている写真を引き出しの奥から取り出した。
「優斗、ごめんね。もう大丈夫だからね」

10/12
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