そして、ゆっくりと長い腕を伸ばしてきた。
「っ、やる気か!?」
セラは身構えた。
だが、迫ってきた大柄な手のひらは、セラの頭を、優しく「ポンポン」と叩いた。
「・・・・・・は?」
呆気に取られるセラ。
八尺様の手のひらは、まるで珍しい小動物を愛でるかのように、
セラの頭を撫で回す。悪魔のツノに指が触れると、心なしか嬉しそうに「ぽぽ、ぽぽ」
と言った。
「な、ななな・・・・・・何すんだよ、離せっ!」
セラは顔を真っ赤にして、八尺様の手を振り払った。
胸がバクバクと高鳴る。恐怖ではない。恥ずかしさだ。
「オレを子供扱いすんな! ツンツン触るな! 悪魔のツノは敏感なんだよ!
・・・・・・だ、大体、 オレは、その・・・・・・別に、撫でられて嬉しくなんてないんだからな!」
全力でツンデレ台詞を叫ぶセラ。
八尺様は遮るように、再び「ぽぽぽ」と小さく言った。
そして、回れ右をすると、長い足でゆっくりと歩き出す。
数歩進んで、セラの方を振り返った。
「・・・・・・何だよ。ついて来いってこと?」
八尺様は無言で頷く。
「チッ、しょうがねーな。オレが道に迷ってたから案内してくれるわけ?
べ、別に頼んでないし! たまたま進む方向が同じなだけだし!」
文句をブツブツと言いながらも、セラは八尺様の後ろを歩き出した。
見上げるほどに大きな白い背中。
怪異と悪魔。二人の影は、やがて霧の向こうへと消えていった。
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