奇々怪々 お知らせ

不思議体験

yu92235さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

四階の住人
短編 2026/05/26 09:14 92view

それから毎晩、俺が寝入ると、四階の住人は俺の部屋に降りてくるようになった。
最初は物音だけ。
次に、俺の布団の端が少しだけめくれる感覚。
そして、ある夜、はっきりと耳元で囁かれた。

「……コーヒー、冷めちゃったよ」

声は若い女の人のものだった。
震えながら電気をつけると、部屋の真ん中にマグカップが置かれていて、中に真っ黒な液体がなみなみと入っていた。
湯気は立っていない。
でも表面が微かに波打っている。

俺はもう限界だった。

大家に直談判に行った。
大家はため息をついて、こう言った。

「あの娘は四階に住んでた子でね。増築のときに天井を落とす工事中に、部屋に閉じ込められたまま忘れられたんだ。
可哀想に、コーヒー飲みながら待ってたんだろうね……」

俺は震える声で聞いた。

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

大家は薄く笑って答えた。

「簡単だよ。君が四階に上がって、コーヒーを一緒に飲んであげればいい。
そうすれば、彼女も満足して下がってこなくなる」

その夜、俺は布団の中で必死に目を閉じていた。

すると、天井がゆっくりと開いていく音がした。
ギイ……ギイ……。

暗闇に、四角い穴がぽっかりと浮かんでいる。
そこから白い手が垂れ下がってきて、俺の布団を掴んだ。

「……ねえ、上がってこないの?」

今、俺はキーボードを叩いている。
部屋の天井に四角い穴が開いたまま、
マグカップが二つ、俺の机の上に並んでいる。

一つは俺のもの。
もう一つ、底に黒いカビのついたやつ。

2/3
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。