次の日の朝、ばあちゃんは死んだ。
医者は老衰だって言ったけど、遺体を見たとき、俺は腰が抜けた。
ばあちゃん、中身が空っぽみたいに縮んでて、重さが全然なかったんだ。
葬式が終わって、実家の蔵を整理してたら、一冊の古いノートが出てきた。
その中に挟まってたケンジの写真。
それを見て、俺は自分の顔を掻きむしりたくなった。
写真の中のケンジは、今の俺と全く同じ場所に、同じ形の「アザ」があった。
昨日までなかったはずの、俺の首筋にあるアザと。
そして、ノートの最後のページ。
殴り書きでこう書いてあった。
『ケンジは死にきれなかった。ずっと器を探してる。
名前を呼ばれて、本人が「そうだ」と答えたら、そこが新しい家になる』
いま、部屋の電気がチカチカしてる。
さっきから、閉め切ったカーテンの向こう側で、「ズリッ、ズリッ」って、泥を引きずるような音がしてる。
「おかえり。……ケンジ」
ばあちゃんの声だ。
でも、天井から聞こえてくる。
手の甲を見てみる。
ばあちゃんに掴まれた指の跡が、さっきより濃くなってる。
これ、アザじゃない。
皮膚の下で、何かが動いてるんだ。
誰か、助けて。
俺はタカシだ。ケンジじゃない。
でも、鏡を見ると、知らない男が俺の口を使って笑ってる。
「苦しくなかったよ」って、ずっと、ずっと呟いてるんだ。
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