「なんかさ、振られたらどうとか考えないで、当たって砕けろみたいな方が良いって女子は多いと思うよ。返事がOKかどうかは別として」
言われてみれば、その通りな気がしなくもない俺は、もう開き直って告白してみようかと考えを改める。
「……ま、いいんじゃない。それじゃあ、今日の放課後にでも告白する? 声掛けておいてあげるよ」
「ああ……頼むわ」
いよいよ告白か――。そんなのはもう遠い未来のことみたいに考えていたけど、いざ告白するとなると、身体が震えてしまう。
武者震いだと自分に言い聞かせ、俺は告白をしに行く決意を固める。
少し迷ったのは、ジャージに着替えるかどうかだ。
俺もサッカー部に行かないとだし、先に着替える方が効率的かな? いや、でも俺って制服とジャージのどっちがカッコいいんだろ。告白するときはちょっとでもカッコいい感じにしたい。成功率だって上がるはずだし。でももしかしたら、ジャージ姿の方がスポーツしてる男ってアピールもできるんじゃないだろうか。男らしいのが好きなら、サッカー部なんて一番アピールポイントだろうし。
あれこれ考えた結果、結局制服で行くことにした。
最大の理由は、学校指定のジャージがなんとなくダサいからだった。
そして俺は、待ち合わせ場所のピロティの柱に背を預けている先輩と対峙する。
「あ、……えと、杉崎くん、だっけ」
俺は間近で見た先輩の美しさと可愛らしい声に言葉を失って、5秒間沈黙したあと「は、はい」と若干声を裏返らせながら答える。
「あの、えと、は、はじめまして、ではなくてですね。一応、あの、部活で、見て、あいや、お目にかかって? いて、ですね」
「……」
先輩は柔らかく微笑みながら、茶化すことも馬鹿にすることもなく、緊張しまくってる俺の言葉を聞いてくれている。
「あの、それで、ですね。先輩が、えと、実はですね、前からですね。先輩のことを、えと、俺、あいや、僕は、実は、前から好きだったのです……」
「そうなんだ」
「は、はい。そうでした。いや、そうなんです。あ、今も好きです。ほ、本気です。先輩が、好きです。俺と――僕と、つ、付き合ってください!」
思いっきり頭を下げて、右手を前に出す。無意識に。
というか、どういう意味だよと自分にツッコむ。
OKだったらこの手を取って、NOだったら手を取らずに去っていくということだろうか。
あーもーよくわかんないけど、神様! お願いします!
もう二度とレギュラーになれなくてもいいです! オウンゴールして顧問に殴られてもいいです! しばらく夕食に肉が出なくてもいいです!
先輩と、付き合わせてください!
「……ちゃんと話したこともないから、すぐにお付き合いっていうのはちょっと」
もちろん先輩は俺の手に触れてはくれていなくて、俺と先輩の距離は変わらず2メートルのまま。でも、俺は先輩との距離が100メートルにも1000メートルにも感じた。
終わった……。
玉砕覚悟だったとはいえ、それでも、どこかでいけるんじゃないかみたいな確信があったのに。
俺のちっぽけなプライドとかアイデンティティみたいな、なんかそういう横文字のよくわかんないあれこれが一瞬で崩れ去っていく感触を味わいながら、俺は絶対涙だけは流さないようにと、地面に向けたままの顔にグッと力を入れる。



























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