あれ?
ここ、遊佐の部屋じゃないよな?
リビングか……?
10畳くらいなのかな——広さとかよくわからないけど、でも床はフローリングだし、壁際に大きいテレビもあるし、どう考えてもリビングだろう。
気になるのは、真っ白なシーツみたいな大きい布が天井から吊り下げられていること。正方形っぽいから、シーツではないのかな。
あと、床に何か描かれている。
なんだろ、魔法陣みたいに見えるのは俺がゲーム脳ってやつだからなのだろうか。
「え、ちょっと、遊佐、これどういうこと?」
まさか母親の見てる前でセックスするの?
え、初めてのセックスがそんなアブノーマルでいいのか俺……なんて馬鹿みたいな想像はすぐに消え失せる。
「めぐみ」
最初からそこにいたのか、遊佐の隣に立っていた遊佐母は、白装束みたいな恰好になっていた。
「大丈夫?」
娘に対して優しく声をかける母親の表情は慈愛に満ちていて、遊佐もその言葉を嚙みしめるようにしてから、ゆっくりと頷く。
「そう。それじゃあ」
遊佐母は目を閉じて、少しだけ顎を上げる。
天を仰ぐってやつなのだろうか、一度深く息を吸い込み、そのまま固まること10秒。何かを決心したのか、シーツの前に描かれた魔法陣みたいな円に向かって、何やらぶつぶつ呟きだす。
俺はただ黙って見ていた。
状況なんてわかるわけなくて、でも多分何度も質問したところで、この2人は答えを教えてはくれないだろうという諦めもあったし、自分の頭がおかしくなったのか、それともリアル過ぎる夢を見ているのかどっちかなんだろうと自分に言い聞かしながらその儀式っぽい何かが終わるのを待つ。
突然電気が消えて、真っ暗になる。
あれ、遊佐の家に着いたのが17時頃だったっけ。いやもう少し早かったか。あれから1時間くらいだった日没まではまだ時間があるはずだけど、でも電気が消えたらこんなにも暗いということは、きっと俺が眠っている間にかなり時間が経過していたんだろう。
なんて考えてたら、ボウって感じで、蝋燭に火が灯される。
遊佐母によって点けられたのだろう。たった1本の蝋燭なのに、かなり明るく照らされているように感じる。
そして、俺の目には先程と同じくシーツが映るんだけど、でもその真っ白い四角の中に——中というか、手前、なのかな、真っ黒なモヤみたいなものが浮いている。
質量のある雲っていうのかな。
しっかり重さがありそうな、水蒸気っぽい黒い塊。
いまいち形の全容がはっきりとしないけれど、多分2mくらいの大きさだ。
「——お願いします」
深々と頭を下げた遊佐母の言葉を合図に、その黒いモヤが俺たちの方へ向かってくる。
まるで手を伸ばしているかのごとく、品定めをするかのように、ゆっくりと。
そして、遊佐の手前で止まる。


























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