1年前の記憶なんてほとんどないし、正直遊佐と仲良くなったと感じたのは先輩のことがあってからだし、感謝される謂れもなければ、好きになられるようなことなんて何もないんだけどな。
「でも、杉崎、最近はずっと陽葵ちゃんのことばっかりで――全然あたしのこと見てくれてなくて。あたしはもっと、杉崎が好きなこととか知りたかったし、色んな知識とかも共有したかったのに」
「それは――だって、遊佐が言ったんじゃん。あたし従姉妹だよってさ」
「……見てられなかったから。杉崎が他の子のこと好きなのも嫌だけど、でもなんか、モヤモヤしてる杉崎を放っておくのも嫌だったし、杉崎が本気で陽葵ちゃんのこと好きだったら、それでもいいかなって。ふたりが付き合っても……しょうがないかなって」
「……」
俺だったら考えられないことだけどな。好きな人が別の人と付き合うのなんて。でも、遊佐はそれでもいいと思ったのか。
好きな人に幸せになってほしいとか、喜んでほしいって想いが、自分の幸せ以上の願いになったんだろうな。
俺にはできるか?
先輩が他の男と付き合うのを応援するなんて。
「……でも、杉崎、デートの帰りにすごい傷ついてたから」
――見ていられなかった。
遊佐はまるで自分のことみたいに、哀しそうな表情でそう言った。
だから、さっきはあんなに食ってかかっていたのか。
先輩と遊佐はかなり仲が良いみたいなことを言ってたし、喧嘩もしたことがないらしい。なのに、さっきは明らかに喧嘩腰で、先輩を批難していた。
先輩は批難される筋合いなんてないはずなのに、それでも感情的にならず、遊佐を諭していた。
俺のせいで、仲の良かった彼女たちを争わせてしまったんだ。
身の程知らずな恋をした俺のせいで、こんな俺のことを好きになってくれた女の子を不安にさせ、大好きな従姉妹に怒りをぶつけさせた。
女子にリードされることがカッコ悪いと、昨日は落ち込んでいたけれど、自分の為に陰でこんなにも心配され、庇われ、大事に思われていることに気づきもしていないことのほうが、よっぽどカッコ悪いよな。
挙げ句、八つ当たりをした。
「最低だよ、俺は」
「……そんなこと、ないよ」
「いや、ほんと最低。ダメダメだよ。マジでヘコむわ」
俺はその場にしゃがみ込む。
正直、さっきの教室での遊佐の発言よりショックがでかい。
ほんと、どうしようもねー奴だな。
恋愛なんて百年早いわ。
「遊佐」
「……うん」
「ごめんな」
「……ううん」
「あと、ありがとな」
「……うん」

























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