それだけ伝えて、俺は先輩のいる教室へと戻る。
遊佐はついてこなかった。俺の向かう先に先輩がいることに気づいていたからだろう。
きっと、これ以上俺のカッコ悪いところを見ないでくれるために、遊佐はそこから動かなかったんだ。
「……おまたせしました」
「大丈夫だよ」
先輩は相変わらずのたおやかな佇まいを崩さず、表情も崩さない。
「言いたいことはちゃんと言えた?」
「……まあ、はい」
「じゃあ今度は私に言いたいことをちゃんと言いに来たんだね」
「そう、ですね。でも、言いたかったことと、今から言おうとしてることは全然違うっていうか、似てるんだけど、ちょっと違うっていうか」
クスっと笑って、先輩は両手の平を俺に向ける。
どうぞ、という合図なんだろう。
「俺、先輩が好きでした。今も、めちゃめちゃ好きです。先輩のこと、全部全部好きです。――好きな、つもりです。でも多分それって、俺の中の理想の先輩なんですよね。先輩の良いとこしか見てないのに、全部が好きとか、ほんと、それこそガキくせーっていうか」
「……」
先輩は何も言わない。薄っすらと口角を上げ、俺を見ている。
「さっき、遊佐が先輩に俺のこと悪く言ってるの聞いて、すげームカついて、信じてたのにって、裏切りやがってって、一生無視してやろうかとも思いました。でも……」
「――理由を聞いて、許してあげたくなった?」
言葉を探して黙した俺に助け舟を出してくれる先輩。こういうさりげない配慮ができるところも、本当に大好きだ。
「……はい。説得力あったから――つか、なんか、遊佐の想いが、すごく伝わってきたっていうか。こんなこと言うと、漫画の読みすぎとか思われるかもですけど、なんか、遊佐の感情が流れ込んできたみたいな気がして、ああ、人の想いって、こういうものなんだなって」
「……自分の告白した時とは違うと感じたのかな?」
「そう、ですね。言葉足らずだったとかってレベルの話じゃなくて、俺はただ、自分の気持ちを言えばそれで良いと思ってて、好きだって伝えれば、相手はその想いに応えてくれるだろうって考えてました。でも、……違いました」
全然、違った。
相手を好きだって感情をただ伝えても意味がない。
そんなの、その辺を歩いてる人をナンパするのと変わらない。
ただ好きだとか、恋したとか、そういうことじゃないんだって、遊佐に教わった。
「……多分俺、まだ恋愛とか早いんでしょうね。女心とかよくわかんないし、もし、万が一、先輩が付き合ってくれたとしても、こんなんじゃ俺、絶対先輩を楽しませてあげることなんてできないですから」
延々と、自信を失くすことを繰り返すだけで、いつか自分に愛想を尽かして、先輩にも愛想を尽かされて――いいことなんてなにもない。
それに。
「好きな人には幸せになってほしいみたいな気持ち、少しだけわかった気もしたんです。俺、先輩が他の男と付き合うとか、考えるだけで気絶しそうですけど、でももし、先輩が本気でそいつのこと好きなんだったら、それもいいのかなとか、そんな風に思えるんです」
「……そっか」

























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