「……意味わかんねーけど」
「杉崎が、髪の長い子が好きって言ってたから、私、一年の頃からほとんど切ってない」
「それがなんの証拠になんの?」
「あと……ペットの名前も『ひなた』だし」
「いや知らねーけど」
「杉崎が好きな漫画とか映画とかドラマとか全部観たし、ラノベも読んだよ。……転生ハーレムものは面白くなかったけど、でも、十巻以上あったけど、全部読んだ」
「……」
「杉崎が好きな場所にも全部行ったし、杉崎が好きな食べ物もいっぱい食べた。料理とか全然できないけど、前に好きだって言ってた油淋鶏とかも練習してる。……失敗ばかりだけど」
「……」
「他には……他には、あたしの部屋には杉崎が好きな女の子の服装ばっかりあるし、杉崎がメイクする女の子は好きじゃないって言ってたから、ファンデも塗ってないし……ほんとは鼻のとこのそばかす隠したいけど……でも、それでも杉崎が嫌いなことはしたくないし――あとは、えと、あと――」
「いやもういいよ」
「……証拠に、なった?」
「別に……」
証拠を出せなんて自分で言っておいてなんだけど、前から好きだった証拠ってなんだよって思ってたのに、遊佐がつらつら語ったことに、悔しいけど心当たりがあった。
遊佐は、俺が知っていること、俺が好きなこと、興味があること、それら全てを後追いで俺以上に詳しくなっていった。
初めは俺が教えてあげるんだけど、すぐに俺よりも精通していって、逆に俺が教えてもらう側になることばかりだった。
今まで、俺のプレゼンが良かったからこいつもハマったんだろうなみたいな風にしか考えてなかったけど、ひとつやふたつではなく、10や20にもなると、流石に偶然では済まされないし、俺の話術がそこまで優れているとももちろん思わない。
じゃあ、なんでそんなに俺に関連する物事に詳しくなるのか。
答えの候補は限りなく少ない。
そして、その中でも最有力候補は、たった今、遊佐自身が口にしたものであることは疑いようもない。
「……つか、なんで、俺のことなんか」
振り上げた拳をあっさりと下ろしてしまうのがなんとも俺らしいというか、もうダサすぎて言い訳のしようもないけれど、興奮はすっかり冷めていて、思いっきりトーンダウンしながら訊いてみる。
「……話し掛けてくれたから」
「はあ? それだけで好きになるか? 普通」
話したこともないのに先輩に憧れていた俺が言っていいセリフじゃないだろうけど、でも、話し掛けたら好きになるって、どんだけ気が多い女だよこいつ……っていう俺の心の声が聞こえたみたいに「そうじゃなくて」と訂正する遊佐。
「あたし、人見知りだし、1年の時は小学校の友達もいなかったから、3年間ひとりぼっちなのかなって、諦めてたんだ。でも、そしたら杉崎が、なんの漫画読んでんの? って」
最初の会話なんて覚えてないけど、たしか遊佐が本を読んでて、多分漫画だろうなと思って訊いた――のかもしれない。
「なんでこの人あたしに話し掛けるんだろうって、ちょっと驚いたというか戸惑ったというか、どうしていいかわからなかったけど、でも、その日だけじゃなくて、それからも、何回も何回も、声、掛けてくれて」
「……クラスメイトなんだから、会えば普通に話すものじゃないのか?」
「そうだけど……そうじゃなくて。ううん、杉崎がどう思ってても、あたしはすごく嬉しかった。――それに、すごく救われた」

























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