今度は血が吹き出すことはなく、服をじわじわと赤く染めていくだけだった。
「――こういうことですよね?」
番場さんはもちろん何も言わない。
私は彼に微笑みかけた後、熊田を刺す。
何度も、何度も。
「こういう! こと! ですよね!」
番場さんはうつ伏せになって、匍匐前進みたいにして部屋からの脱出を試みる。
私は彼をこの部屋から出すつもりはないので、彼に先んじてドアまで移動しようとするのだけれど、「番場くん!」と叫びながら結城さんが現れてのを見て、動きを止める。
情けなく結城さんに縋り付く番場さんは格好悪くもあったけれど、やっぱり私の王子様であることには変わりなくて、今にも泣き出しそうな弱々しい表情も私は大好きだ。
新たな一面を見て、好きな人を更に好きになったのだけれど、私は十数分後に来た警察官に逮捕されてしまい、番場さんと会えなくなってしまうことが悲しくて泣いてしまう。
あーあ。
初恋って、やっぱり実らないんだな。
熊田の居室に備え付けられている洗面台のミラーに映る自分の涙が綺麗で少しだけ見惚れてしまいながら私は、初めての恋と、それを実らせずして失った私の儚くも美しいこの物語を、いつの日か自分の子供に語ろうと決意した。
前のページ
7/7
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 8票


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。