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心霊

御室真代さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

死を嗅ぐ
長編 2026/04/06 09:05 11,856view
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野良猫が俺の部屋で死んでた。

ほんの気まぐれで食べ物を与えただけだったのだが、やけによく懐かれてしまい、度々部屋に入れるようになり、最終的には窓から勝手に入ってくるまでになっていた。

あの野良猫は、両親の反対を強引に押し切って東京に来た俺にとっては、唯一の話し相手だった。何物にもなれない、甲斐性もない、空っぽな男が、同じく何物でもない、ただの野良猫相手に、愚痴や不満話を聞かせる。傍から見れば滑稽だったろうが、あの六畳一間には確かに絆があった。

だが猫は死ぬ前になると姿を隠すものだ。

猫が部屋に来なくなってからしばらくして、部屋の中で異臭がするようになった。腐ったキャベツにも似たような、なんとも形容しがたい独特な臭いだ。

あの頃は知らなかったが、あの異臭は死臭だと知った。タンスの裏に隠れていた腐敗した話し相手を見つけた時、俺の心は本当に空っぽになった。

それ以来、死の匂いに敏感になった。

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あれから数年が経ち、母から久々に連絡があった。

親父が死んだ時以来だったか。『お父さんが亡くなった』とだけのショートメールには返信すらしないばかりか、

『お父さんの葬儀、終わったよ。』と、画面に追加されるのを待ち遠しくすらも思った。

親とはそんな関係だった。我ながら酷い息子だとは思っている。だが、親父には世話になった記憶も思い出も特には無い。別にあれで良かったのだとも思ってしまう。

だが、母はやはり別物なのだろう。

腹の底に沈殿していた罪悪感が、たった1本の電話で浮遊して舞い、気がつけば新幹線に乗っていたのだから、母の強さを嫌という程思い知らされる。全くもって厄介なことになってしまった。俺はまだ、親父の葬儀に参加しなかった事と、10年近く音信不通になっていた事の言い訳すらも思いついていない。

母さんの事は本当は大切に思っている。

でも、会いたくない。

矛盾した2つの感情に揺られながら、電車にも揺られた。感情も、脳味噌も、身体も。揺れに揺れていた頭に浮かぶは電話での母の言葉だった。

「母さんね、最期にあんたに会いたいよ。」

*

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