その条件はこうだ。
◦必ず一人で治す事。
◦手放すときは必ずスクラップにすること。
・そのバイクに乗る時は必ず胸部プロテクターをすること
そして最後
◦何があっても自己責任ということ。
これが社長が出した条件だった。
次の日から私の事故車修理が始まった。
毎日終業後、残って作業をした。
正直に言ってまだこのレベルの事故車を治せる実力は無かったが必死に頑張った。
修理を進めていたある日、
指に付いたオイルを拭おうとした時、それが金属の汚れではなく、人間の脂のような、ねっとりとした甘い臭いを放っていることに気づいた。だが、私はそれを『新車の匂い』だと思い込み、作業を続けた
2ヶ月ほどたった頃、ようやくそのバイクを形にすることが出来た。
まるで事故も何も無かったのように私のバイクは傷ひとつなくそこに止まっていた。
初めてキーをオンにしようと手を伸ばした時、手が震えた。
震える手で鍵を回す。
スタートボタンを押しエンジンをかける。
【キュルキュルッ!ブルンッ!】
エンジンは快調だ。
他の箇所も完璧。
この辺りから私は私の意思、私の意識というものに違和感を覚えていた。
まるで映画を見ているような。現実味のない感覚。この感覚は今になっても言葉では言い表せない。
ただ興奮している当時の私にはそんなことはどうでも良かった。憧れてるバイク、ずっと欲しかったバイクが自分のものになった。その嬉しさだけが私の脳内を支配していた。
最初に異変が起きたのはそのバイクを初めて乗って帰った帰り道だった。
家の駐車場につきエンジンを消し家に入ろうとすると後ろから突然音がした。
【キュルキュルッ!ブルルンッ!】
私がさっきエンジンを消したはずのバイクが閑静な住宅街にエンジン音を響かせていた。
まるで まだ足りない、もっと走ろうと言っているかのように。
通常、勝手にバイクのエンジンが掛かることなどあり得ないことだが当時の私は 少し癖のある可愛い愛車、となぜがポジティブに捉えていた。
その後わたしは狂ったようにそのバイクに乗った。四国ツーリング、北海道一周、国道1号線走破など旅行好きでもない私がまるで何かに取り憑かれているかのように走った。とにかく走った。




























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