まるでこの世に存在する楽器すべてを素人がめちゃくちゃに演奏して、それを重ね撮りしたようなその音は、スマホのスピーカーを壊す勢いだった。
急な爆音に体が跳ね上がり、思わず手に持っていたスマホを落としてしまった。
地面に伏せたスマホのスピーカーから流れる不協和音は床に反響して、その振動でスマホが動き回るほどだった。
焦ってスマホを拾い上げたと同時、ピタッと曲が止まった。
5秒程の静寂の後、通常通りの曲が流れ始めた。
先程の滅茶苦茶な音に反して流れるその曲は見事に俺好みのトロピカルハウスに仕上がっていた。
思ったよりも完成度が高いし、削除しようか迷ったけど編集して最初の部分を切り取ればなんとかなるか…。
そんなことを考えていたときだった。
またあの爆音が部屋に響き渡った。
耳を塞いでいても手を通り抜けて鼓膜に突き刺さるような不協和音。
しかし今度は何かが違う。
何重もの楽器が重ね合わさった音の中に歌詞が聴こえた。
いや、歌詞というより何かのフレーズを繰り返し歌っている?喋っている?
塞いでいた手を少し開いて耳をすましてみる。
「…たぁ……い………しぃ……」
耳が壊れるほどの爆音で最初は全然わからなかったが、徐々に俺の耳はその言葉を拾い、理解した。
理解したと同時にすぐにスマホの電源を再起動した。
急な静寂に耳鳴りがした。
再起動してアプリを開くとまだその曲はプレイリストに残っていた。
気のせいかとも思ったが、もう一度再生する勇気など俺にはなかった。
それ以来俺はAI音楽生成やその類のものを使うことは一切無くなった。
というより音楽全般を聞くことがなくなった。
だって普通の曲聴いてても聞こえてくるんだよ。
俺とよく似た声で
「死にたい」って。

























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