あるお寺の小坊主さんが夢を見たのです。
非常に利発で優秀な小坊主さんでして、お経を誰よりも早く覚え、学校でも成績は優秀
住職さんも大変かわいがった小坊主さんでした。
小坊主さんは学校から帰るとお寺の境内を箒で清めてから本堂でお経を読みあげて
畑で野菜を取り夕ご飯の支度を始めます。近所のおばあさんがお手伝いでお寺に来て
小坊主さんと二人で住職さんや他の兄さん達の食事を準備します。
夜の食事は全員が共に食べる決まりになっているのです。
住職様の隣は小坊主さんが座り、給仕も行います。その夜の食事の時に
「御師様、お話したいことがあります」と小坊主さんは昨日の夜に見た夢を話します。
「おかしな夢をみたのです」
「夢を見るとはよく寝ている証拠だ。どんな夢なのか?」と住職が聞くと
「私は黒い袈裟を着て畑の一本道を歩いていますと、向こうから白い着物を着たお爺さんが
杖をつきながらやって来たのです。
私は道の端に寄り、その御老人が横を通る時に合掌いたしました。
すると御老人は立ち止まり「小坊主殿よ。どこのお寺に居られるか?」と聞かれまして
私は「○○で修業中でございます」と言いました。
御老人は「○○か・・建興様はお元気であろうか?」と聞かれましたので
「建興様ですか?申し訳ありませんが存じ上げません」と返事をすると
「はて?建興様を知らぬとは年月も過ぎたものかな」と首を傾げられ
「そうだ小坊主殿、○○の吉祥様が「肩が凝って仕方ないのでなんとかせい」と申して
おったぞ」と思い出したように私に言うと歩いて行ってしまわれました。
私は御老人を背中を見ていたのですがみるみると透けていき、見えなくなってしまった
のです・あの御老人の言う建興様や吉祥様とは当寺に関わりのあるお方達でしょうか」
住職は途中から箸を止めて考える。
僧侶の一人が住職に「吉祥様とは・・吉祥天様の事でしょうか?」と本堂にある仏像の事
を言うと、住職は箸を置いて立ち上がり本堂に弟子と共に行くと
吉祥天の立像をジッと見つめて「あ・・誰か脚立を持って来なさい」と叫んだ
木造である吉祥天立像は三ヶ月ほど前に修復のために分解されたが、組み上げた時に
肩のはめ込みがズレてしまっていた。よくよく見るとキチンと嵌っていないようで
右手が少し下がってしまっている。
























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