どうやって出たのか覚えていない。
後日、家は再び貸し出された。入居者は若い夫婦だという。
私はもうあの家には行かない。だが最近、自室で作業をしているとき、ふと違和感を覚えることがある。
自分の影が、机の下で半歩ずれている。壁の角が、わずかに深い。廊下の先が、以前より暗い。
そしてときどき、足音が遅れて返る。
半拍だけ。
それは、あの家と同じ遅れ方だ。
私はまだ、あの小部屋から出ていないのかもしれない。
あるいは、出ていないのは“もう一人”のほうかもしれない。
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