照明も何もない山の中では、暗くなるスピードが尋常ではない。
木々がこすれあう音が、何かの獣がすぐ近くにいるのではないかと不安をあおる。
本当にこの道であっているのか・・・足元も暗い。
と、そんな時、それほど遠くないところから「クォ~ン」という犬の甘えるような声が聞こえた気がした。M氏はそれが懐かしいリッキーの声ではないかと直感した。
リッキーは、寂しいときにいつもあんな鳴き方をした。
M氏が顔を見せると、しっぽを振って一目散に駆けてくる姿が愛おしかった。
M氏は鳴き声のする方に向かって歩みを速めた。
たどり着いたそこは元居た道路。ハザードを付けた自分のクルマが停車していた。
「ふぅ~~~」と大きく、安堵のため息をついた。
不思議な気もしたが、リッキーの顔を思い浮かべながら感謝した。
だが、そうして峠道に戻ったM氏は、やがて暗闇と霧に包まれ、不思議な自販機コーナーへと導かれるのだ。山の怪たちがM氏に興味をもったのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・
・・・自販機コーナーで、ふと我に返るM氏。
今あった出来事が本当のことだったのか、あるいは疲れて眠って夢でも見ていたのか、
今こうしていても霧がかかったように頭が晴れない。
ただ、目の前にはスープまで飲み干したラーメンの入れ物と、
使い終わった割り箸だけが置いてあった。
M氏は気を取り直してそれらを片付け、再びクルマに乗りこんだ。
山の霧は、もうすっかり晴れていた。
自販機コーナーの方を振り返らないようにして、M氏はアクセルを踏んだ。



























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