「いやボクは・・・」そう言いかけて、少し前に起きていたトラブルのことを思い出した。
「人間はなぁ・・・きつねもたぬきも殺しまくって、好き放題して、そのあげくにたぬきそばだぁの、きつねうどんだぁの・・・殺された方の身にもなってみろって言うんだよ」
お爺さんが少し語気を強めてそんなことを言い出した。目も血走っている。
M氏は気まずくなって話を変えようと思った。
「ほ、ほら、その隣にひもかわうどんがありますよ?幅の広い麺がなかなかの食感で」
そこまで言ったところで、お爺さんの様子が変わってきているのが感じられた。
青白い薄気味悪い表情で、唸るような不気味な声で語り出した。
「ひもかわより、人皮の方がええなぁ・・・」
「え?・・・なんですか?」
「人の皮じゃよ、生きたまま剥いで、それを血の汁につけてな、こうずずずーっと」
お爺さんの後ろで、影が伸びる。
「えええ、ななな、なんですか!?」後ずさりするM氏。
蛍光灯が切れかかっているかのように、点滅しだし、一瞬だけ真っ暗になった。
「なぁいいじゃろ? 殺さんから、皮をはぐだけじゃから!」
明かりが点くと、目の前に生気のないお爺さんの顔があった!
「うわぁぁぁ、じょ、冗談はやめてください!!」M氏が叫んだその時、突然大きな音と共に扉が強く開け放たれ、何者かが小屋の中に入ってきた。
それはずんぐりとした大きな体の女で、黒い髪を振り乱し、全身黒ずくめ。激しい怒りの表情で、ズカズカと突進してきた。小屋の中に獣のような異臭が立ち込める。
大女に驚いたお爺さんは一瞬体が固まってしまっていた。
大女はかまわずそれに突進し、その勢いのままお爺さんを押しつぶしたかのように見えた。
気がつくと、お爺さんはまるで煙のようにその場から消えていた。
いったい何が・・・。M氏は呆気にとられ、震えながらその様子を見守った。
大女はゆっくりと振り返り、元来た道をがっしりとした足取りで戻っていく。
M氏とすれ違う間もまだ怒りの表情をくずしていなかったが、低い声で一言だけ
「・・・今回だけ助ける・・・」とつぶやいて、扉の外へと出て行った。
腰を抜かしながらへたり込み、その姿を目で追うM氏。
だが、その視線に突如可愛いらしいものが映りこんだ。
扉から半分だけ顔を出して、小さな男の子がこっちを見ている。
目がくりっとして黒目がちでかわいいのだが、
先ほどの大女に似て、なんとなく全身が黒っぽく、毛深い。
(さっきの大女と親子なんだろうか・・・)と思ったその時、不思議なものが目に入った。
男の子が首からぶら下げている神社のお守りに見覚えがあったからだ。




























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