M氏は唐揚げラーメンを食べることにした。
たったの300円である。
投入口に100円玉を3枚入れる。
カウントダウンが始まった。
25秒・・・24秒・・・23秒・・・早い。
たった25秒でラーメン一杯出来上がりである。
あまりの速さと安さに感嘆する。
取り出し口から丼を引き寄せる。
フタを開けると唐揚げが二個。麺を混ぜると下からうずらの卵が顔を出した。
(ハズレか。まぁいい、うずらのたまごは大好きだ)
見た目は質素な感じがしたが、すすってみるとそれなりにうまい。
温かいスープが体に染み渡る。
なんとなくずっとつづいていた緊張がほどける気がした。
・・・と、先ほどからいた先客がスッと立ち上がり、自販機の方へ歩み寄った。
M氏は少し疑問に思った。(ん?今まで何かを食べていたわけじゃなかったのかな?)
先客の後ろ姿を何気なく観察してみた。
骨と皮ばかりのような痩せた老人・・・薄汚れた衣服を着て、なんとなく周囲より一段暗いようにも見える。気のせいだろうか。
不意にそのお爺さんが話し始めた。
「きつね・・・うどん。たぬき・・・そば。・・・どっちがうまいかのぅ」
黙って聞いていた。
「きつねとたぬき、どっちがうまいかのぅ・・・」
「えっ?」どうやらM氏に尋ねているようで、M氏は一瞬動揺した。
「あ、そ、そうですねぇ・・・どっちもおいしいと思いますから、その日の気分で・・・」
血色の悪い、くぼんだ目がM氏をとらえながらさらに聞いてくる。
「どっちもうまいのかい? あんたはきつねもたぬきも食った事あるんかい」
「え?・・・えぇ・・・って、あの本物の動物のきつねとたぬきは食べたことないですけど」
「なんだ、ないのかい。・・・ところで知っとるかい? クルマにひき殺される動物で一番多いのはなんだと思う?」
「えっ?」M氏は先ほどから困惑してばかりだ。
「・・・やっぱり、犬とか、猫とかですかね・・・」
「ふん・・・たぬきじゃよ、たぬき。たぬきはびっくりすると体が固まって身動きできなくなるのさ。それでクルマの前で体が固まっちまうんだな。あんたもクルマに乗っているんなら、1回くらいは轢いたことあるんじゃろ?・・・なぁ」



























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