他のファンたちがノリノリな中、その女だけはただじっと上目遣いで坂井田を睨んでいた。
彼はその日深夜まで演奏の予定だったが、体調不良を理由に途中でステージを降りた。
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ライブハウスを出た坂井田は途中コンビニに立ち寄ると店頭で酒を飲み、それから午後7時過ぎの地下鉄に乗る。
車内は混んでいた。
彼はつり革に掴まりながら、ボンヤリと正面の暗い車窓に映る自分の姿を眺めていた。
その時だ。
ゾワリと背筋に気配を感じ、思わず振り返る。
だが視界に入るのはつり革に掴まる乗客たちの疲れた背中だけだ。
ホッとした彼は正面に向き直ると、またボンヤリ車窓を眺める。
その時だった。
突然、耳元で囁く女の声が聞こえる。
リュウクン、、、
マタコエガキキタイヨ、、、
一瞬で坂井田は全身が総毛立った。
車窓に映る自分の肩越しに、焼けただれた女の顔がある。
うわっ!
思わず悲鳴をあげた坂井田が振り返る。
だが視界に入るのは、やはり乗客らの疲れた背中だけだった。
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