おそらく、哀子さんは恥知らずな娘夫婦から畑泥棒をするよう指示されていたのだろう。あれだけJ地区やK地区の中で噂になっていたのだから、アコさんが母親の所業を知らなかった筈がない。
また、お互いにものを投げたり壊したりする乱暴なカップルであるが、ついには実母の資産まで強奪して旦那に差し出したアコさんは、共依存だったに違いない。
ついでに言うと、この夫婦の娘の孫子(まごこ)さんもとても意地悪な奴だった。私よりも一学年下であるが、地区の共同作業のおりに何度も私を笑いものにしやがった。下校の際に、私の頭の上にわざと枯れ草を置いたり、ランドセルの中にカマキリやらバッタやら入れてきたこともある。
今はもう、孫子さんと会うことはない。だが、私はまだ彼女の過去の悪行を許していないので、心の中で「鬼畜生の娘」と呼んでいる。
この話の中で悪いのは、いったい誰だろうか?哀子さんのお姑さんがやっていたことは、明らかに嫁いびりと児童虐待である。
私はどうしても恐ろしいことを考えてしまうのだが、婿郎さん・アコさん夫妻は、哀子さんが独りさみしく息をひきとられたことに、本当は気づいていたのではないだろうか?そして、哀子さんの死をご近所さんに知られないように、二人で【隠ぺい工作】をしていたのではないだろうか?
その目的はただ一つ、彼らは哀子さんの年金を自分たちが代わりに受け取りたかったのだ!
誰も玄関まで出てこられないと、家の郵便受けにも配達物がたまる。特に、回覧板が止まると近所迷惑になる。おまけに、J地区やK地区は家の電話がつながらないと、ご近所さんが心配をしてわざわざ家までお越しになるような土地柄だ。あくまで私の推察にすぎないが、夜間に哀子さんの家に灯りがともらなくなった頃から、この娘夫婦は「哀子さんの了承を得ていることにしてお手紙に返事をしたり、近隣の人々にも上手いことを言ったりして」、哀子さんが生存しているように見せかけていたのではないだろうか?
J地区もK地区もあまりデリカシーがないところなので、誰かが入院したりするとご丁寧にどういう病気なのか訊いてくる人も多い。その中で、婿郎さんとアコさんの口裏合わせに矛盾点があるのに勘付かれたのかもしれない。何よりも、記録的な猛暑の中でも農作物を探し求めて歩いていた哀子さんのお姿が見えないのはおかしいと、近隣の人々に気づかれたのだろう。
実に皮肉だが、哀子さんの生前の生り物の窃盗行為が、彼女自身の発見につながったと思う。
ところで、哀子さんの畑泥棒を黙認していた集落の人々に怖気を感じたのは私だけだろうか?警察に窃盗被害の相談をしたら、家族ともども地区の鼻つまみ者にされる。たとえ手間暇かけて育てた野菜や果物をうばわれても、他の被害者さんと一緒に泣き寝入りをするのが正しいとされるのだ。
私の両親も哀子さんが身罷られたことを悲しんでいたが、知り合いの中に【とんでもないこと】を呟いた人がいたらしかった。そいつはなんと、心から安堵した様子でこう公言したという。
「ああ、良かった!これでやっと、畑を荒らされんで済むわ」


























哀子さんの娘さんの仮名は、当初「吾子(わが子)」にする予定でした。より読みやすくするために「アコ」にしました。
沈丁花です。一部誤字や分かりにくい表現がありましたので、修正・加筆しました。これまで読んでいただいた644名の皆様、大変失礼いたしました。誠に申し訳ありませんでした。もう、どうして私はこうもそそっかしいのかなあ・・・・・・。