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kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山で遭難して出会った木こりの話
長編 2025/11/06 23:01 23,326view
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「おい! お前ら、なにしてる!」

反射的に立ち止まり、息を荒げながら振り返ると、男が一人、作業服にヘルメット姿で立っていた。
腰には無線機、胸には「山岳管理課」と刺繍の入った腕章。

「助けてください! 襲われたんです! 斧を持った木こりの男に!」

俺たちは半ば泣きながら説明した。
息も絶え絶えに、昨夜の出来事を途切れ途切れに話すと、男は顔をしかめて言った。

「……そんな小屋、この山にはないはずだがな」

「え……?」

「この辺り、全部うちの管轄だ。登山客も入れねぇ区域だし、木こりなんて何年も前からいない」

亮介と俺は、顔を見合わせた。

何も言えなかった。

俺たちはそのまま、管理人に連れられて山のふもとの事務所へと案内された。
古びた木造の建物で、中には無線機や地図、登山届の用紙などが並んでいる。
ストーブの上で湯気を立てるポットの音だけが、静かに響いていた。

「……もう一回聞くけどな」
管理人は腕を組み、俺たちの正面に座る。
「お前ら、本当に“木こりの小屋”を見たのか? 場所は? 時間は?」

「何度も言ってるでしょう!」
亮介が苛立ち混じりに叫ぶ。
「山の中腹あたりで、斧持ったおっさんに会って──泊まれって言われて……それで!」

俺は口を乾かせながら、できるだけ冷静に状況を説明した。
男の顔、声、斧の音、血の臭い。
あの地下室に続く扉のことも、全部。

管理人はしばらく黙り込み、目を細めて俺たちをじっと見つめていた。
嘘を見抜くような、鋭い目。
俺の心臓がドクドクと鳴る。

やがて、管理人は深く息を吐き、腕を組み直した。
「……お前ら、嘘ついてねぇな」

その言葉に、俺と亮介は思わず顔を見合わせた。
管理人の表情が、徐々に険しいものへと変わっていく。
そして、何かを思い出したように、低く呟いた。

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