ガクッ
突然車が止まった。
「どうした?何かあったか?」
「いや、何もないのにいきなり止まったんだ。」
俺は車の画面を見ると、自動ブレーキが作動したと表示がされていた。
「自動ブレーキ?何もないし誰もいないぞ…?」
通常の走行では、自車を中心に、大きな道路だったり信号だったり、もちろん巻き込みや飛び出しの注意のために人物に対しても、簡易的だが立体的なグラフィックで表示されるのだが、こんな山道では当然ながらそんなものは表示されていない。
しかし画面には、周りの木々に隠れているが、この車を囲むように何人もの人物の反応があるのだ。
「こんなところに人が…?」
「しかも5人…いや7人くらいいるぞ…。」
しかし、その姿は肉眼では見えない。
俺は暗視カメラのファインダーを覗いてぐるっと車の周りに向けると、ほとんど白黒ではあるが、うっすらとカラーで表示されるファインダー越しに見えないはずの人間が見えた。
「ど、どうなってんだよこれ!」
Kは画面に写ってる人影が、いくら目を凝らしても肉眼では見えないことに少し混乱していた。
人影は、画面上ではゆっくりとこの車に近づいていた。
このままではいずれ「彼ら」に囲まれるだろう。
俺の暗視カメラ越しにも「彼ら」が近づいていることがわかる。
いつのまにかその人数も増え、12~13人ほどいるように見えた。
Kはアクセルを踏むが、車は一向に前に進まない。
まだ自動ブレーキが利いているのだ。
Kは焦るあまり、ハンドルのボタンやレバーいろいろとを触るが車は動かず、買ったばかりの車の勝手がわからなかったのだ。
相変わらず肉眼では見えないが、気が付くと、画面上、そしてファインダーでは、この車はすでに「彼ら」に囲まれていた。
ビーーーーーー
突然、クラクションが鳴った。
Kがレバーを触った時に思いがけず鳴らしたようだ。
すると「彼ら」は蜘蛛の子を散らすように車から離れていった。
もちろん、肉眼でも画面上でもファインダー上でも、「彼ら」は車の周りにはもういなかった。
気が付くと自動ブレーキは解除されたらしく、車は動き出した。
「何だったんだあれは…。」
Kは気を取り戻したが、周りが見えないまま走らせるのは危険だと判断し、ライトをハイビームに切り替えた。






















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