理由を聞くと、新しいアルバイトを雇うことになったらしく、明日来るその新人の教育係として、仕事の流れを教えてほしいとのことだった。
「えっ……俺が?」と最初は驚いたが、よく考えれば、もう先輩として仕事を任される立場になっていたのだと納得する。
そして翌日。
新人アルバイトがやってきた。何というか、ちょっとDQNっぽい雰囲気の男で、髪は明るめの茶色、服も派手め。
「新しく入りましたぁ〜、◯◯です!よろしくおなしゃーす!」
と元気に挨拶してくる。俺は少し肩をすくめながらも、先輩として落ち着いて対応しなければと心の中で気を引き締めた。
そして早速、新人に仕事着に着替えてもらい、カフェでの基本的な動きや接客を教え始めた。見た目は派手で、ちょっと軽いノリに見えるが、意外にも一応真剣に話を聞いている。
教えながら、ふと気になって質問してみた。
「で、なんでこの店で働こうと思ったの?」
新人は少し間を置き、しぶしぶ話し始める。どうやら俺と同じ大学生らしいが、授業にはあまり出ず、友達と遊んでばかり過ごしていたらしい。だがある日、急にお金が足りなくなってしまい、アルバイトを探さざるを得なくなったのだという。
「それで…このカフェのバイトを見つけたって感じですか?」と俺が聞くと、彼はちょっと照れくさそうにうなずいた。
「まぁ、時給も悪くないし、何より……なんか落ち着いた雰囲気で、そこそこ稼げそうかなって」
俺は内心で苦笑しつつも、まあ、この子なら仕事には慣れそうだな、と少し安心した。
すると、あっ、そうだと思い出した。
「そういえば、バチさんのこと、まだ教えてなかったな」と俺は口にした。
新人は目を大きく見開き、首をかしげる。
「バチさん?誰ですかそれ?」
俺は少し身を乗り出して、ささやくように説明した。
「なんでも、昔からこの店に通っている常連客らしいんだ。店長の知り合いみたいでね。で、このバチさんを丁寧に接客すると、店長が『今日の給料は少し増やしておこう』ってことになるんだよ」
新人は目を丸くして「え、給料増えるんですか!?それってすごくないですか!」と驚く。
俺は少し笑いながらも、心の奥で妙な緊張を覚えた。
「うん、でも…変な人だから、絶対に追い出したり、雑に扱ったりしちゃダメだよ。何が起きるか分からないから」
新人は頷く
そのまま何事もなく新人に教育しながら日々の業務を続けていたある日のこと。
キッチンで洗い物をしていると、店長がある事情で少しだけ席を外すことになった。
表のフロアでは新人が一生懸命に接客しており、注文をさばこうと忙しく動き回っている。
俺は背中越しに忙しそうな新人の動きを見ながら、淡々と皿を洗っていた。
すると、店内に新人の怒鳴り声が響いた。
「あの!貴方、汚いんで!ちゃんと綺麗にしてから来てくださいよ!」
……汚い?
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。