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呪い・祟り

kkさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

常連客のバチさん
長編 2025/09/29 19:25 7,960view
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一瞬、皿を洗う手が止まる。胸の奥がざわりとした。まさか…

慌てて表に出ると、そこには新人に怒鳴られているバチさんの姿があった。
新人は腕を組み、眉を吊り上げて睨みつけ、客相手とは思えない態度を取っていた。

その一方で、バチさんはというと、相変わらず不思議な笑みを浮かべて、何も言わずにこちらをちらりと見た。

俺の背筋に冷たい汗が伝う。
やばい。これは、やばいことになる。

新人は止まらなかった。

「それにその小銭、錆びてるし汚いし!臭いまでついてんじゃねぇっすか!マジで不衛生だから、他行ってくださいよ!」

「ていうか、その格好もボロいし……何ですか?浮浪者か何かっすか?こんな店に来んなって!」

言葉の刃が、立て続けにバチさんへ突き刺さる。

周りの客たちもざわつき始め、空気が一気に張り詰めていく。

バチさんは、ただじっと新人を見ていた。
笑っているような、睨んでいるような…その表情は読めない。

俺は心臓を掴まれたみたいに冷たくなり、喉が渇いて声が出なかった。

バチさんは静かに立ち上がった。
その動きはゆっくりなのに、なぜか店全体の空気がぎゅっと重くなるように感じられた。

「…ならぁ…今日は帰るぅよぉ。…その代わり…あんたぁ……バチ当たるよぉ……」

低く、湿った声。
まるで店内の照明すら一瞬、陰を落としたように思えた。

新人は一瞬たじろぎながらも、強がるように「はぁ?脅しっすか?意味わかんねぇんだけど」と吐き捨てる。

だが、その声はほんのわずかに震えていた。

バチさんは何も言わず、扉を開け、鈴の音と共に外へ去っていく。

俺はゆっくりと新人に歩み寄った。
「……おい、今の人、バチさんだよ」

新人は「えっ?」と間抜けな声を出して固まる。
さっきまでの威勢はなく、肩がピクリと震えた。

「だから言っただろ。バチさんには丁寧に接客しろって……」
俺は低く言い聞かせるように告げた。

新人は唇を噛み、「……マジで?あの汚ぇおっさんが?」と小声で返す。
その声には動揺と、ほんの少しの後悔が混じっていた。

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