「おまっ、恥ずかしいからそーゆーのやめろよぉぉぉ! ホラ、仕事すっぞ」
「はぁ~い」
「おーい、朽屋~~、ちょっとミーティング入ってくれ」
編集長が会議室のドアを開けて手招きしている。
編集長のヴィンセント三上はこれまでの付き合いの中で、朽屋の持つ霊感などを知っており、
いわば編集部内でも特別視していて、他のスタッフにも内密な話を朽屋にはよく相談していた。今回は取材対象でもあるリネアと、膝を突き合わせての事前ミーティングというわけだ。
・・・・・・・・・・・・
「元Ox大教授のニック・ボストロム氏のことはご存じデスカ」と質問するリネア。
それに応える編集長。
「確か、我々のいるこの現実世界が、実は高度な文明によってシミュレートされた世界なのではないか?という仮説を提唱したトランスヒューマニズムの先駆者だったと記憶しています」
「さすがデスネ。彼はワタシと同じスウェーデン人で、私と同じG大学出身なのです」
「なるほど、その関係でG大学にはそのような研究をする部門があると」
「それだけではアリマセン。トランスヒューマニズム学は、哲学、政治学的思想に加え、医学的、技術的、そして倫理的スタンスからの研究もおこなわれてイマス」
「ほほう・・・リネアさんの専攻はどのような研究なのですか?」
「ワタシは・・・」そう言って左手の手の甲を見せるリネア。
「ココ・・・親ユビとヒトサシユビの間に、私のデータが入ったインプラントが埋め込まれてイマス」
「うわー、テレビで見たことあるやつだ!」と朽屋。・・・もう信じるしかない。
「インプラントと言えば、身近なものでナニか思い出すモノはアリマセンカ?」
「えっ、え~と、よく聞くのは歯医者さんに行ったらインプラント治療があるなんて聞きますね」と自分の口を指さしながら答える三上。
「ヤー、その通りデス。実は、歯の治療に使用されるインプラント技術を開発したのは、ワタシの大学のペル・イングヴァール・ブローネマルク教授デス」
「へぇーそうだったんですね」
「彼はウサギを使った実験の最中に、チタン製の器具とウサギの骨が拒否反応を起こさずに、結合しているのを発見し、その現象をオッセオ・インテグレーションと呼んで学会に発表したのデス」
「なるほど、ふつうの金属ならば人間の体と拒絶反応を起こすのに、チタンだと拒絶反応が起きない・・・それがインプラントになったと」
「そうデス。その後の研究もめざましく発展し、人間の骨や組織、細胞と金属の結合がどのように行われるのか研究されました。人々はトランスヒューマニズムをどこか遠い未来の存在、夢か現実離れしたおとぎ話の世界と考えガチですが、実際には世界中の人々がサイバネティクスなテクノロジーを利用して多くの人工臓器を使用しているのデス。つまり、もうすでに始まっているのデス。あとは時間の問題デス」
「おお~テクノロージア!!」思わず叫んでしまう朽屋。
現実世界が実はシミュレーションなのではないかと言うトランスヒューマニズムの思想は、非現実的にも思えるが、朽屋にはなんとなく腑に落ちるようなところもあって考えさせられた。なんといっても常日頃、悪魔だのUFOだの宇宙人だのを追いかけて実際に戦ったりしているのだ。どっちが現実でどっちが非現実なのか、朽屋は考えすぎて頭の中が真っ白になった。
「ん、もうこんな時間か・・・よし、お昼にしようか。リネアさん、今日は私がお昼ごちそうしますよ。行きましょう」時計の時間を確認し、リネアをお昼に誘う編集長。
「うわぁ~さすが編集長太っ腹~!」大喜びする朽屋。
「何言ってんだよ、おまえさんは自腹だよ、じ・ば・ら!」























kanaです。
久しぶりの朽屋瑠子シリーズは、なんとこれまでの最長22ページに到達してしまいました。
でもたぶん行間も多いし、読めば読めるのではないかと思います。
今回はちょっと笑えるシーン多めですかね。笑ったり、怖かったり、グロかったりしながら、ラストでジーンと来てくれるとイイなと思います。
今、コメント欄はどうも筆者以外の人は書き込めないようになっている感じですが、良いなと思った方はぜひ怖いねボタン押してってください。 ありがとうございました。
kanaです。裏話。
今回タイトルを-事件記者 朽屋瑠子-ではなく、-朽屋瑠子暗殺計画-にしようかと思っていたのですが、忘れてました。忘れてましたがこれでいいです。実はこの-朽屋瑠子暗殺計画-というのは、ウルトラセブンの「セブン暗殺計画」をネタに取り入れようと思っていたからです。なので最初にダンタリオンが朽屋をいろいろ調べるシーンがありますが、あそこはガッツ星人がアロンを使ってセブンをシベ上げるシーンのオマージュにするつもりでした。でも、ガッツ星人にはダン隊員ではなくセブンを暗殺する明確な理由がありましたが、ダンタリオンにはないので、完全オマージュは却下となりました。
後半、九郎とリネアが戦うシーンで、朽屋が「私のために争わないで!!」みたいなセリフを入れようとも考えましたが、まぁ朽屋はそんなこと言わないなとやめました。
それとリネアとのキスシーン。朽屋は感度を上げて調べ上げますが、この時の感度を3000倍にしようかと思ったのですが・・・自粛しました。さすがにそんなにないでしょと。
引き続き、お楽しみください。
↑ シベ上げる× → 調べ上げる〇
応援してます!朽屋瑠子シリーズおもろいです!by読者
kanaです。
22ページ読むのはツライけど、えっちなシーンだけどうしても見たいという御仁は、すべてをすっとばして17ページからお読みください(笑)
↑あー!
読者さんありがとうございます!
一般の方はまだコメント投稿できないのかと思ってました。ありがとうございます〜
全く九郎ちゃんがこんな悪い子だなんて(いいぞもっとやれ)。
いつも通り面白いw待ってました朽屋瑠子シリーズ!、、、いつか小説化しないかな
法王騎士団は大阪府警のマルボウですか?
↑わー、コメントありがとうございます。楽しんでいただいて何よりです。
マルボウはイタダキました。カチコミの時の「大阪(府警)じゃ!!」と略すんだなーというのが忘れられず。・・・法王騎士団、意外とコワイ。
今回は九郎大活躍ですね。しかも今回は九郎がいなかったら朽屋は死んでたかもしれないですからね。いい仕事と悪い仕事の両方を達成しました。
つなみに、自分の中での九郎は「宇崎ちゃんは遊びたい!」の宇崎ちゃん(胸はないバージョン)で、
リネアはなぜかずっと四国めたんが頭の中にいました。