まるで洞窟のように暗く冷たい場所。
赤や紫、青、緑・・・禍々しい色の光が揺らめいている。
数人の悪魔が大きなテーブルを囲んで座っている。
ひとりはライオンの頭を持つアリー、もう一人はドーベルマンの頭を持つケレブだ。
その二人が見つめる先に、ひときわ異様な姿の悪魔が陣取っている。
いくつもの歪んだ男女の顔が醜く連なる頭を持ち、後頭部からも長い髪の毛の間から複数の顔をのぞかせている、そんな恐ろしい姿の悪魔だ。
右手に魔導書を開きながら、テーブルの上に映し出されたいくつもの映像を、そのたくさんの目で見ているようだった。それぞれの顔がそれぞれ別の思考をしているようで、一度に大量の情報を見聞きできるようである。
彼の名はダンタリオン。位は侯爵。36の地獄の軍団を率いる大幹部の一人でもある。
かつて、日本攻略のために魔王ダヴィデ、バルベリト侯爵、ビフロンス侯爵らが侵出を試みたが、いずれもことごとく返り討ちにあっており、ダンタリオンはその状況を調査していた。
法王騎士団日本支部、あるいは日本古来から存在すると言われる退魔組織などの障害もあるが、ダンタリオンが気になったのは『朽屋瑠子』という女性の存在だった。
「朽屋瑠子・・・こやつはいったい何者なのだ・・・。運よく今の日本には法王騎士団の正規の騎士は常駐しておらんようだから、日本を攻略し、ベリトやビフロンスらの仇を討つ絶好のチャンスではあるのだが・・・」
過去に朽屋たちが魔物らを相手に戦った戦闘シーンなどが、テーブルにおぼろげに映し出される。それを眺めるダンタリオン。
剣や槍を使った戦闘もさることながら、近代的な銃器を使った狙撃までする朽屋の力に驚いた。通常の銃ならば、悪魔や魔獣、死神といった魔界に生きる者に通用するはずもない。だが、朽屋は魔弾を操り、魔物を殺す力をもっている。
映像が今から9年ほど前の魔王ダヴィデ戦を映す。当時の戦闘で、魔王に与えられるはずだったシジル刻印の3つを朽屋が横から奪い取り、魔王の代わりに自身の体に刻み込んだのである。普通の人間ならばその場で体が爆散して即死してもおかしくない状況だったはずなのに、結果として朽屋は生き延び、その魔力を開花させてしまったのだ。
ダンタリオンは、過去の映像を見ながら、朽屋が魔弾を3発撃つと極端な睡魔に襲われ、戦闘不能となる事も見つけた。「ならば、この眠ってしまった隙に殺せば良いではないか」そう思ったものの、同じように朽屋が倒れているところを槍で襲おうしたバルベリトが、不思議な力によってすべてはじき返されのを見た。それは巨大な鳥の足のようにも見えた。
「こ、これです!!」
「そう、コイツです!!」
ライオンとドーベルマンの悪魔が同時に指を差しながら喚きだした。
「我々がまだダヴィデ様の配下にいる時、永久自殺機関を守るためにこの女と戦ったことがあるのです。その頃は・・・この女はまだ年端もいかぬガキでしたので、もうあと少しで殺せるところだったのですが・・・」
「突如我々の後ろに、巨大なカラスが現れたのです・・・コイツです。間違いありません」
「フ~ン、で、君ら命乞いして逃げてきたわけだ」さげすむような眼で二人を見つめるダンタリオン。
「面目ありません!! 圧倒的な力の前に、ただただ殺される姿しか思い浮かばず・・・」
委縮するライオンとドーベルマン。
「まぁいいでしょう。勝てない相手に力業で挑むのはバカのすることです」
哀れな目で二人を見続けるダンタリオン。
「現にあの戦闘狂のバルベリトでさえ、このカラスに手間取っている間にやられてしまったのですから」
許されたようでホッとするライオンとドーベルマン。
「なるほど、このカラスが神通力を持って朽屋瑠子の守護霊をしているから、朽屋は死なずにシジル刻印を受け取れた・・・」
「ベリト卿との戦闘でカラスが実態として現れなかったのは、しなかったのではなく、できなかったとみるべきか」
「大魔王の刻印を3つも抱えているのだ、朽屋の身体から出ることが出来ないのだろう」
「私にいい考えがあります」
「フフフ・・・正攻法が無理ならば暗殺すればよいのです」
「コイツを使いましょう」
「なるほど」





















kanaです。
久しぶりの朽屋瑠子シリーズは、なんとこれまでの最長22ページに到達してしまいました。
でもたぶん行間も多いし、読めば読めるのではないかと思います。
今回はちょっと笑えるシーン多めですかね。笑ったり、怖かったり、グロかったりしながら、ラストでジーンと来てくれるとイイなと思います。
今、コメント欄はどうも筆者以外の人は書き込めないようになっている感じですが、良いなと思った方はぜひ怖いねボタン押してってください。 ありがとうございました。
kanaです。裏話。
今回タイトルを-事件記者 朽屋瑠子-ではなく、-朽屋瑠子暗殺計画-にしようかと思っていたのですが、忘れてました。忘れてましたがこれでいいです。実はこの-朽屋瑠子暗殺計画-というのは、ウルトラセブンの「セブン暗殺計画」をネタに取り入れようと思っていたからです。なので最初にダンタリオンが朽屋をいろいろ調べるシーンがありますが、あそこはガッツ星人がアロンを使ってセブンをシベ上げるシーンのオマージュにするつもりでした。でも、ガッツ星人にはダン隊員ではなくセブンを暗殺する明確な理由がありましたが、ダンタリオンにはないので、完全オマージュは却下となりました。
後半、九郎とリネアが戦うシーンで、朽屋が「私のために争わないで!!」みたいなセリフを入れようとも考えましたが、まぁ朽屋はそんなこと言わないなとやめました。
それとリネアとのキスシーン。朽屋は感度を上げて調べ上げますが、この時の感度を3000倍にしようかと思ったのですが・・・自粛しました。さすがにそんなにないでしょと。
引き続き、お楽しみください。
↑ シベ上げる× → 調べ上げる〇
応援してます!朽屋瑠子シリーズおもろいです!by読者
kanaです。
22ページ読むのはツライけど、えっちなシーンだけどうしても見たいという御仁は、すべてをすっとばして17ページからお読みください(笑)
↑あー!
読者さんありがとうございます!
一般の方はまだコメント投稿できないのかと思ってました。ありがとうございます〜
全く九郎ちゃんがこんな悪い子だなんて(いいぞもっとやれ)。
いつも通り面白いw待ってました朽屋瑠子シリーズ!、、、いつか小説化しないかな
法王騎士団は大阪府警のマルボウですか?
↑わー、コメントありがとうございます。楽しんでいただいて何よりです。
マルボウはイタダキました。カチコミの時の「大阪(府警)じゃ!!」と略すんだなーというのが忘れられず。・・・法王騎士団、意外とコワイ。
今回は九郎大活躍ですね。しかも今回は九郎がいなかったら朽屋は死んでたかもしれないですからね。いい仕事と悪い仕事の両方を達成しました。
つなみに、自分の中での九郎は「宇崎ちゃんは遊びたい!」の宇崎ちゃん(胸はないバージョン)で、
リネアはなぜかずっと四国めたんが頭の中にいました。