僕の通っている高校の図書室に「G.I.ジョー」の人形が置かれている。その「G.I.ジョー」は深夜になると図書館内を行進するという噂があった。僕やクラスメートたちはその事でもちきりだったのだ。僕のクラスの担任の先生は図書館の「G.I.ジョー」の事を教えてくれた。
それは2、3年前、一月期が終わり。夏休みが始まる前だった、先生が残業を終えて、愛車の日産・シルビア(S13型)で行きつけの喫茶店「Sophisticated Lady」に向かう時であった。勿論、夕食を「Sophisticated Lady」で済ませるためにだ。先生はシルビアに乗り込み、エンジンをかける時、ふと、校舎の方に目をやった。図書室の灯がついているのだ。
「いったい誰なんだろう?用務員さんか当直の先生かな?それとも・・・」
先生は外から図書室の中を覗いてみることにした。そして、図書室の中を見た先生は絶句した。そこにはプロテウス症候群の男の子(所謂、エレファントマンって奴だ)が「G.I.ジョー」を並べて遊んでいるのだ。男の子は笑いながら、「G.I.ジョー」に向かってジークハイル!をする。「G.I.ジョー」もジークハイル!を始めた。先生は冷や汗をかきながら、図書室にいる彼らに気付かれないようにシルビアの方に戻る。先生は一息つくと、シルビアのエンジンをかけて、学校を後にした。その時、屋根から
ドン!
と叩く音がした・・・が、この時、カーステレオのボリュームが大きすぎて、先生は気づいていなかったのだ。先生はカーステレオから流れるヤン・ハマーの「Miami Vice Theme」を聴きながらシルビアを走らせる。数分後、「Sophisticated Lady」の近くの駐車場にシルビアを止めると「Sophisticated Lady」の店内に入る。店内からロキシー・ミュージックの「More Than This」が流れる。ロキシー・ミュージックのボーカリスト、ブライアン・フェリーのアンニュイなボイスは深夜の喫茶店の雰囲気に合っていた。先生は頬を緩ませて
「マスター。いつものオムライスのセットを頼むよ」
といった。ちなみにマスターと先生は高校時代からの親友だ。マスターは
「R(先生の苗字)、図書室の「G.I.ジョー」とプロテウス症候群の男の子を目撃したんだろ?」
と初毛する。先生は驚きが隠せなかった。
「あ、図星だったか、はははッ」
「もしかして、マスターは図書室の「G.I.ジョー」の事で何か知っているのかい?」
「ああ。俺がRが勤めている高校に通っていた時期に図書室の「G.I.ジョー」が置かれたんだ。何故、図書室に「G.I.ジョー」が置かれたのかと言うと、あの当時、学校の付近をプロテウス症候群の男の子が徘徊していたからなんだ。そこで当時の理事長が「高校の図書室におもちゃでも置いたら街中を徘徊しなくなるだろ?」と言ったからなんだよ。当然、その効果があったのか、プロテウス症候群の男の子の目撃情報が無くなったんだ。だが、厄介なことにプロテウス症候群の男の子は高校の図書室に居座るようになってしまったワケだ。それから数週間たって、プロテウス症候群の男の子は校舎から飛び降りて死んだ。殺されたのか、自殺だったのか分からないが。Rが見たのは恐らく、その幽霊だろう」
先生がオムライスを食べている時に客の一人が入店してきた。客の発言に先生は真っ青になる。
「駐車場に止められている日産・シルビアなんだけど、窓やボディに大量の手形が貼り付いていたぜ」
終わり

























やっば