膜はどんどんその厚みを増していき最後は、まるで巨大な薄青い寒天のようなものが出来上がった。
─なんだ、これは?
膜の中はまるでプールの底面から見上げているような光景だ。
そしてちょうど私の2メートルほど真上の辺りに、天井に張り付くように二人の男女の姿が現れた。
その姿を見た途端、全身に冷たいものが駆け抜ける。
一人は隆志?そうだ隆志だ!
パンツ一枚の痩せた白い体で大きく目を見開き黒髪をユラユラ揺らせて身を任せながら、じっと私を見下ろしている。
そして隣には、、、
─ともみさん?
恐らく生前のままの白いワンピース姿で隆志と同じくユラユラ漂っている。
二人は手を繋いでいた。
私はまるで金縛りにあったかのように、ピクリとも体が動かせないでいた。
心臓は急激に鼓動を速めている。
しばらくの間二人はじっと私を見詰めていたが、やがて少しずつ少しずつボヤけだし最後はフッと消えた。
同時に膜も霧散し、視界には格子柄の白い天井が視界に広がっているだけだ。
私はピクリとも動けずに、ただ呆然とそれを眺めていた。
※※※※※※※※※※
後日、私はこの話をオカルト好きな友人に相談する。
私の話を最後まで聞いた後、彼はこんなことを言った。
「結論から言うと、
きみの弟の彼女さんにはきみの弟を恨む気持ちなど、なかったと思う。
でもきみの弟は彼女に対する罪悪感で苦しんでいた。
それで止せば良いのに、わざわざ事故の現場にまで足を運んでしまう。
地縛霊としてそこで彷徨っていた彼女さんは生前の記憶が甦り、弟について行ったんだろうな。
最後は弟を自分の世界に引っ張り込んだんだと思う。























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