トウマくんとマユさん

トウマくんとマユさんって、ご存知ですか。
この話は、私の故郷である北海道のとある街で
伝わるお話です。

この二人は、非凡な美貌と凄まじい霊能力を
生まれ持った、少し異常に仲の良い双子の兄妹
だったそうです。
そして、その霊能力というのがなかなか厄介で、霊的な存在を認識したり、干渉できるのは2人共に共通した能力であったそうですが、
兄のトウマくんの方は、人間の精神や記憶にも干渉できるというかなり特殊な能力を持っており、
妹のマユさんの方は、生物や無生物を問わず、
ありとあらゆる実体の中にある、いわゆる

「気」とか「チャクラ」と呼ばれる
エネルギーに干渉できる、という非常に強力な
能力を持っていたそうです。
この美しい双子は、もともとかなり好奇心旺盛な性分であった事もあり、小さな頃からこの霊能力でたくさんのいたずらをしてきました。
しかし、そんな二人はやがて、
気がついてしまったのです。
自分達はいずれ、死に分かれるという事実に。
さて、幼少期から狂気的なほどに、
互いに慈しみ合ってきたこの双子。
凄まじい恐慌をきたした。

それは二人にとって、とても受け入れられるような事実ではありませんでした。
そして、二人は熟考の末に、実行に移すことを
決意したのです。
人間をやめて、二人で永遠に生きる事を。
この兄妹の非凡な霊能者を以てすれば、
確かにそれは可能でした。
そして彼らは、本当にやってのけたのです。
まだ17歳の高校3年生だったある日、人としての肉体を脱ぎ捨て、自分達の精神と魂を、
煙水晶の宝玉に宿らせた。
それは自殺と呼べる行為でした。しかし、狂気に侵された二人には、もはや肉体の死ですらも
喜ばしい行為であったのです。
そうして人ならざる双子は、初めは二人で永遠の存在となった事を喜びました。そして、憑代である煙水晶に影響され、その姿も次第に変わっていったのです。肌は死人のように青白くなり、唇の血色も褪せ、焦げ茶色と黒の洋装を纏い、髪や瞳は黄唐茶色になり、その姿はまるで煙水晶の精霊のようで、死してなおも美しかった。