【音声記録データ:整理番号 R-2909】
【収録日時:20██年8月14日 13:45】
【場所:第4埠頭・重機整備用プレハブ内】
【話者:甲(私/社内監査員)、乙(現場監督K/故人)】
(背景音:海風の音、遠くで金属を圧縮する重機の駆動音、扇風機の回る音)
甲:……ええ、では空調の話はこれくらいにして。例の「荷物」についての報告を続けてください。現場からは異質な物品が頻繁に出ると聞いていますが。
乙:異質? ああ、またあいつらが変な噂を流したのか。まあ、船をバラしてりゃあ色んなモンが出るさ。密輸品の残りカス、出処不明の骨董、時には……人間そのものとかな。
甲:人間、ですか。
乙:生きているか死んでいるかの違いはあるがね。特にこのドックに来るような老朽船は、籍の怪しい連中が寝床にしてることがある。船倉の奥、二重底の隙間、バラストタンクの中。ゴキブリみたいにへばりついてるんだよ。
甲:そういった不法侵入者は、通常どう処理を?
乙:警察に突き出すのが筋だが、面倒だろう。書類仕事が増えるだけだ。だから俺は現場の連中にこう言ってる。「面白いモンを見つけたら、俺の所に持ってこい。黙って買い取ってやる」とな。
(氷がグラスに当たる音)
乙:現金と交換だ。そうすりゃ連中は喜んで口を割るし、隠し事もしなくなる。お陰で俺のコレクション棚はガラクタで溢れかえってるがね。錆びた勲章、どこの国とも知れない硬貨、見たこともない文字盤の計器……。
甲:その中に、報告書には記載できないような「当たり」もあったと?
乙:……ああ。一つだけ、とびきりイカれたのがあった。
(ライターを着火する音、煙を吐く音)
乙:ありゃあ、五年ほど前に解体した鉱石運搬船の中だ。気密区画のバルブを焼き切ったら、中に男がいた。ガリガリに痩せてて、肌なんか透けるほど白くてな。
甲:生存していたんですか?
乙:ああ。だが、言葉が通じない。どこの訛りとも違う、奇妙な発音で喚いてた。俺たちを「地表の管理者」だと勘違いして怯えていたよ。
甲:地表?
乙:笑い話だろ? そいつ、自分は「マントルの下層」から上がってきた調査員だと言い張ったんだ。
甲:地底人説ですか(失笑)。随分と古典的な妄想ですね。
乙:俺もそう思ったよ。長期間の閉鎖環境でガスでも吸って頭が湧いたんだろうとな。だが、そいつは妙に具体的だった。奴らの世界には「太陽」がない代わりに、地核の熱を振動に変換して光を得ているとか、植物はすべてガラス質でできているとか、そんな講釈を垂れた。
甲:SF小説の読みすぎでしょう。
乙:まあ聞けよ。そいつが懐から奇妙な「プレート」を出したんだ。半透明の樹脂みたいなんだが、見る角度によって内部に立体的な地図が浮かび上がる。
甲:ホログラムのような?





















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