私はクリエイターとして何か作品を作ることを諦めた会社員の男である。
私はどうすることもできない人間だ。
しかも人一倍負の感情が強い人間だ。
SNSでとても上手な絵を描いたり、歌を歌ったりする人を見てはこう思う、この人たちが妬ましいと、特に自分よりも若い人がそのような投稿をするとよりその負の感情が芽生えてくる。
この人達のような物を生み出せないのは、どうしようもなく怠惰で対して努力をせずに無意識に壁を作ってきた自分であるというのに。
仕事で疲れ切った手で帰りの電車の吊り革を握る、そんな中、オレンジ色のどこか未来を照らすような美しい空を見るとどうしても、ああ、私じゃなくてあの人達ならこんなものを描くことが出来るんだろうな。
なんて悲しい気持ちと溜まった感情が少し溢れたかのように目から涙が不意に出てくる。
家のベットに寝転んだ後なんでこうなった、そんなことを考えていた。
しかし、それは無駄な行為である。
過去を振り返っても、今更タイムリープ系の漫画やアニメのように時を戻すことはできない。
こんな人間として生まれた自分に吐き気がして、乾いた笑いが出てくる。
そんなマイナスなことばかりを考えて、眠りにつけなくなっていたが、ようやく眠りにつくことができた。
そして、あまり昨日と変わりないどんよりとした気分で電車を使い会社に行き、同じようにパソコンで資料の作成をして退屈に退屈が重なったような作業を今日も朝からやり、終わった頃にはもうヘトヘトになっていた。
ただ今日はこんな最悪な気分を少しでも晴らすためにいつもとは違う帰り道で帰るということを決めていた。
人1人もいない道を疲れに疲れ切った状態でヘロヘロになりながら一歩一歩踏み出すことに情けなさを覚えつつも自分で決めたことはしっかりやりたいというプライドのせいでそんな行動をやめることができなかった。
その時だった、ふと顔を上げると「それ」がいた。
それは百足のような何かで、(ムカデの)頭にあたる部分はボサボサの髪の中年の女の頭で、(ムカデの)足にあたる部分は人間の足と手が混ざったかの様な歪な形をしており、ところどころその足の先に、年老いた男、俺と同じぐらいの年齢の女、まだ高校生ぐらいであろう男などの様々な人間の頭があった。
そんなものを見た私はこの状況を把握出来ずに混乱していると、それの頭は
「なんであの人達みたいに私は絵を描けないの!?」
「俺はなんであいつらみたいに動けなくて笑われなければなれなかったんだ、、、」
「姉ちゃんだけ!姉ちゃんだけ!姉ちゃんだけ!いつも褒められるのは姉ちゃんだけ!」
とそれぞれの嫉妬の感情を声に出した。
形は違いつつも、同じ感情を持ってるそれを見た私は、同じだなとぽろっとその言葉を口から出していた。
その声に反応したそいつは、カシャカシャと音を出しながら節足動物のように移動して、私に近寄りこう言った。
「ねえ、貴方も同じなのぉ?」
その見た目に若干の恐怖を感じつつ私は、静かにそれに対して頷いた。
それを見たその得体の知れないやつは笑みを浮かべ私に対して、
「じゃあ、やり直させてよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
と大きな笑い声を出して、とてつもない速度で私に近づいてきた。
恐怖が最高潮に達した私は「ぎゃあああ!」と大声を出しながらそれに、追いつかれないように必死に自分の家に帰ろうと走った。

























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