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不思議体験

fudousanyaさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

養殖池のオジサン
長編 2025/07/22 10:13 2,819view

なんか、この時代の服装ではないような違和感もあり、そもそもこの人は誰だろう?と思った

のですが、「庭に職人さんが入ることがあるのよ」と大叔母に聞いていたので、きっと庭の

職人さんなんだろうと思ったんです。

腰に白い手拭いを差していて、それが長い手拭いでして片手で取ってそのままおでこが拭ける

ほど細長いのです。翌日も夕方にそのオジサンが養殖池に居ました。

おばあさまに台所でシラスを貰い、それを魚にあげる為に養殖池に来たんですけど、オジサン

がやはり覗いていて、私を見るとニコニコとし、手に持ったシラスを池に入れると

「魚のごはんだね」と話しかけてくるのです。「それはなに?」「シラスです」「へえ」

「キミはどこから来たの?」「東京から来たんです」「そうか、うんうん」と昨日と同じ手拭い

が膝まで長くて、それをひょいと手で掬うように顔を拭くのです。夕暮れになると屋敷での

夜ごはんが早いのでわたしは帰るのですが、なぜかオジサンは動かないのです。

翌日も夕方、また居ました。「なにをしてるんですか?」と聞くと「魚を見てるんだよ」

と言い「いいねえ、うんうん」と嬉しそうにニコニコしています。

それを叔父にも大叔母にもおばあさまにも言ったんですけど、三人とも興味無さそうに

「職人さんでしょう」で気にしていないのでした。

なんとなく、数日も逢っていると「職人さんじゃないみたい」と思うんです。

まるで働いてたように見えないし、白いシャツも汚れてないし、なによりも、そのオジサン

が職人さんとかそんな感じには見えないんですよね。

(近所のオジサンだろう)と思っていました。

私も毎日、養殖の池にいくわけでもなく大叔母と市内に出掛けたりもしましたので、その

オジサンが毎日来ているのかも判りません。

数日後の夜ごはんの時に、だいぶ慣れた叔父が「明日は池の掃除を頼んだから朝から手伝い

をして」と言うので、巨大な池の水を抜いて池の底をブラシで綺麗にする池掃除を職人五人

が行うのを叔父と共に手伝う事になりました。

池の底には大きな瓶が埋まっていて、水を抜くとその瓶に魚が集まるのです。そんな瓶が三つ

あり、水を抜いた後に魚を別の小さな池に入れておきます。

錦鯉と黒い鯉しかいないはずが、昨年私が養殖池に放したウグイや鮒も出て来ました。

その後、はデッキブラシで池をゴシゴシと洗い、コケや落ち葉を取り除いて行きます

休息の時に縁側に座り麦茶や羊羹を大叔母とおばあ様が運んできて「二年に一度の池掃除」

「昔は上の養殖池も掃除したから三日も掛った」とおばあ様が言うのです。

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