303

時計が壊れた。
デジタルのはずなのに、針があるみたいに3:03で止まってる。
電池を替えても戻らない。

まあいいかと思ってたけど、昨日からちょっとおかしい。

部屋で仕事してたら、玄関のチャイムが鳴った。
インターホン見たら、誰もいない。
でも、カメラには黒いノイズが一瞬だけ映ってた。

気味が悪い。
でもまあ、風とか虫とか……で片付けた。

夜、風呂に入ってたら、誰かが洗面所を歩いた音がした。

同居人はいない。
猫もいない。
鍵は閉めた。
でも確かに、スリッパの音だった。

上がって確認したけど、誰もいない。
ただ、スマホの時計が見慣れない表示をしていた。

「3:03」
まだ23時だったのに。

その日から、3:03になると「気配」がする。

背中。

ベッドの下。
カーテンの裏。
鏡のすぐ向こう。

何かが見てる。
でも、見えない。
感じるだけ。

今日、会社の先輩が言った。
「最近、3時3分になると気分悪くなるんだよな。時間が、変に重いっていうか」
それを聞いてゾッとした。
あの時間は、自分だけじゃなかった。