─いったいどういうつもりだ?
俺はハザードを出してエンジンを切らずに、停止していた。
暗闇の中、後方で立ち込める排気ガスの向こう側には、あのトラックが同じように、ハザードを出して止まっている。
国歌はいつの間にか消えていた。
俺は呼吸を整えると、音楽のボリュームを下げ後ろの様子を伺う。
相変わらずハザードがチカチカと明滅している。
特にこれといった動きはない。
ただそれがかえって不気味さをつのらせた。
─車から降りて後ろの運転手に声をかけてみようか。
あんた何のつもりだ?と。
いや、こんな時間に、あんな変な車で、しかも「君が代」を大音響で鳴らしながら走るイカれ野郎だ。
何をされるか分からないぞ。
もう一度、バックミラーに目をやる。
軍服の男は何をするわけでもなく、ただ運転席にじっと座っている。
恐る恐る顔を見たとたん、ゾッとした。
肌は青白く痩せこけ、血走った二つの目でじっとこっちを睨んでいる。
まるで戦時中の旧日本兵のようだ。
※※※※※※※※※※
どれくらい経っただろうか?
車内のデジタル時計は一時を少し過ぎている。
─こんなことをしていてもらちがあかない。
俺はウインカーを右に出して、再びゆっくり走り始めた。
この話は怖かったですか?
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