やはり……
後ろのトラックも走り始めた。
また、あの耳障りな国歌を鳴らしながら。
─これではっきりした。
後ろの奴のターゲットは間違いなく、俺だ。
じゃあ、何のために?
嫌がらせか?
頭の中で、そんなことをしそうな知り合いを考えたのだが、全く思い当たらない。
そもそも俺がこんな真夜中にドライブをしていることなど、誰も知らないはずだ。
─こうなったら、逃げるしかない。
俺はぐっとアクセルを踏み込んだ。
時速六十、六十五、七十……
デジタルのスピードメーターの数値がぐんぐん上がっていく。
ハンドルを握る手に思わず力が入る。
手のひらに生暖かい汗を感じる。
喉元に心臓の拍動をはっきり感じる。
前方の視界はどんどん狭くなっていった。
同時に、あの忌々しい「君が代」の音もどんどん遠退いていく。
それでもスピードは落とさず、
途中何度となくタイヤを鳴らしながら左へ右へ分かれ道を曲がり、ひたすら走り続けた。
ようやくチラリとバックミラーに目を移す。
暗闇しか見えない。
─よし、どうやら、かなり引き離したようだ。
俺はホッと一息つくと、徐々にスピードを緩めていった。
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