【自己責任系、閲覧・朗読注意】
※現時点でご気分がすぐれない方は、この話を読んだり朗読したりしないことをお勧めします。
身バレを防ぐために、一部フェイクを入れてあります。
これは私が二十代後半の時に、本当に体験した話だ。
私は当時他県の会社で仕事をしていた。その年最後の業務を終えた翌日に、中部地方の田舎の実家に帰省した。大晦日の日から、母もやっと年末年始休暇に入った。父方の祖父母と両親は、その2年前から完全同居を始めた。祖父に大病が見つかったからだ。今は元気があり、家にいられるが、いつ具合が悪くなるかわからない。よって、家族の誰もが戦々恐々としながら、新年の準備をしていた。そんな折、母方の祖父が入院先の病院で一時予断を許さない状態になったが、なんとか息を吹き返したと連絡があった。
私が母方の祖父の容体が悪化したことを知ったのは、年が明けてからだった。母は、長年祖父と同居していた伯父から話を聞いたのだろう。とにかく、なぜもっと早く祖父の病院に行ってやらなかったのか、今でも悔やまれてならない。
結局、祖父の元を訪れたのは、元旦を過ごした後だった。病院に行く前に、母と私は母方の先祖の墓参りをすることにした。母の里は、私の実家から車で約一時間ほどかかる。その日は曇天で、身を切るような冷たい風が吹きすさび、凍てつくような寒い日だった。
私は母方の先祖の墓所の前で手を合わせた。
そうしたら私の視界の奥で、沢山の人々が集合写真を撮るような並び方をして、満面の笑みを浮かべているのが見えた。具体的な人数まではわからなかったが、少なくとも10人はいると感じた。多分、母方の祖父と親しかった人々だろう。最前列の真ん中には、威厳のある和装の男性が立っていた。彼の右手側には、こぼれるような笑みを湛えた女性が二人立っていた。そして彼らは、私に礼を述べてくれた。
『ありがとう、ありがとう。こんな寒い日に、遠いところからわざわざ来てくれて。』
『よう来てくれたなあ。嬉しいわ。本当にありがとうなあ。』
と、話しかけられた気がした。私は訪問を歓迎してもらったような気分になり、たいへん感動した。
私は母方の伯父や年上の従兄姉たちのことは、あまり好きではなかった。小さなころは母の里で歓待を受けてみたいとよく願ったが、伯父はマイペースな人で、従兄姉たちは幼児の私には無関心らしかった。この時、私は幼い頃の願いを叶えてもらったように感じ、嬉しくてたまらなくなった。小さい頃の私は、何か特別なことを母方の親族たちにしてもらいたかったのではない。ただ、
(よく来てくれたねえ、大きくなったねえ。)
(〇〇ちゃん<私>は、どんな遊びが好きなの?)
と、温かな声をかけてほしかったのだ。
いつしか私は母の里を訪れる目的を、寡黙ではあるが優しい目をした祖父に会うことと、この在所の山紫水明の美しさを見ることにしていた。
「いえいえご先祖様、私らはお線香を上げに来ただけですよ。」
と、私は心の中で答えた。
『わし等はものや花を持って来るやのうて、おまえのように心ある若者がいつまでも忘れずに来てくれるのが嬉しいのや。』
と、和装の男性は懇切な言葉をかけてくれた。























続きはあるんですか?
沈丁花です。初心者のために短い後編をこしらえてしまい、かえって読みにくくしてしまいました。皆様に、より読みやすいと思っていただけるように、【前編】と【後編】を一緒にしました。
頑張ってください!よかったです
沈丁花です。コメントありがとうございます。とっても嬉しいです😊🌸
沈丁花です。一部脱字と誤字がありましたので、訂正しました。間違いを発見し、直すのが遅くなる、誠に申し訳ありませんでした。