雨宿りのために入ったバーで意気投合した彼の話に熱中して、外の雨が止んだことにすら気づきませんでした。
「……なんだか、不思議な話を聞かせていただき、ありがとうございました」
そうお礼を伝えた私に、彼は微笑を保ったまま、こう言いました。
「お兄さんも気をつけてくださいね。意識した瞬間から、呪いは始まりますので」
その言葉に、どこかぞわりとするものを感じながら、わたしは軽く会釈をしてバーを後にしました。
……あれから、数日が経ちました。
特に私の身には何も起こっていません。
何かの気配を感じるようなこともありません。
いたって問題ない日常を過ごしています。
それなのに……
気づけば、なぜか視界の端を気にしてしまう自分に気付いてしまいました。
いたるところで、視線を彷徨わせては、何もないことを確認してしまうのです。
駅のホーム、会社の前、コンビニの防犯ミラー……
本当に、あらゆる場所で。
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