盆踊りの音が聞こえ、屋台の匂いが鼻をくすぐる。
人の声、笑い声、金魚すくいの水の音――全部が現実に戻ってきた感触だった。
帰ってから、姉にあの出来事を話すと、彼女は首を横に振った。
「その時間、私は家にいたよ。おばあちゃんと一緒に」
それからしばらくの間、俺の中であの“姉の姿”が脳裏に焼きついて離れなかった。
あれは一体、何だったんだろう。
俺を助けようとしたのか、連れて行こうとしたのか――それは今でも、わからない。
でも、ひとつだけ確かなことがある。
あの時、俺が提灯の光に向かっていたら――
きっと、もうこの世には戻ってこれなかった。
あれが「あの世の入口」だったのだと、今では思っている。
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異世界、行ってみたいですね。この世のものじゃない祭りも見てみたいです。