その後、三日間、ドラマの撮影再開の連絡は無く、気になった僕は、カトウさんに連絡をとってみた。
カトウさんによると、撮影再開の予定は無く、このドラマはこのままお蔵入りするらしい。
もともと曰く付きの撮影だったし、監督の失踪を理由に、プロデューサーが中止を指示したそうだ。
だが、短い時間ではあったが、このまま解散では、ちょっと寂しい。
そう考えたカトウさんは、撮影に関わった関係者で解散飲み会を開く事にしたそうだ。
飲み会の日。10人程の人が飲み会会場の居酒屋に訪れた。
全員ではないが、よく集まった方だろう。
飲み会の席では、カトウさんが場を盛り上げ、マナミさんが酌で撮影の労を労い、楽しい場を作っていた。
ミキさんの姿も見える。
大人同士の飲み会の不慣れな僕にも、マナミさんは甲斐甲斐しく世話をやいてくれる。
ただ、監督不在で飲み会をしている事に罪悪感があるのか、監督についての話題が出る事は無かった。
飲み会が盛り上がった頃、ミキさんの携帯が派手な音をたてて鳴りひびく。
「なによ、こんな時に…。え、非通知? 誰よ。」
ぶつぶつ言いながら、ミキさんは通話ボタンを押す。
「誰よ、あんた。…え、声…、か、監督ですか?」
ミキさんの声に、皆が驚く。
そして電話を掴むミキさんに目を向ける。
「今どこにいるんですか? 屋敷? 入るんじゃ無かった? 追われてる?」
飲み会に参加した人たちは、固唾を飲んで、ミキさんの声を聞いている。
「え、なんですか? 開かずの間? え?」
…電話が切れたようだ。
「ミキさん…。今のは?」
カトウさんが、携帯を耳に当てながら呆然とするミキさんに話しかける。
声をかけられ、ミキさんはハッと我に返ったように、携帯を胸に掻き抱く。
「今、監督から、電話があった…。」
ミキさんが呟く。
「そうみたいだね。」
「監督、何かに追われてるみたいだった。例の屋敷にいるみたい…。」
「イタズラ電話じゃないのかな?」
「でも、凄く切羽詰まってる声だったよ。」
ミキさんは、普段のギャル語も忘れているようで、普通の喋り方をしている。それほど驚いたのだろう。
ただ事じゃない雰囲気を感じ取ったのか、カトウさんは、みんなに向かって、
「僕はこれから、屋敷に向かってみるつもりだ。監督か危険な目に合っているかもしれないのに、放ってはおけない。一緒に着いて来てくれる人はいませんか?」
と提案する。
カトウさんの発言に、マナミさんが手を上げる。
「私も行きます」と、はっきりとした声で返事を返す。
マナミさんの他にも数人の人間がカトウさんに付いて行く事になった。
その中には、ミキさんの姿もあった。
「あたしが電話もらったんだよ。あたしも行かなきゃ。」
もちろん、僕もカトウさんに付いて行く。























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