飲酒をしていなかったカトウさんの運転するワゴン車で、僕達は屋敷に移動する。
車内の人間は、皆、緊張の面持ちだった。
真夜中に屋敷の敷地内に入るのは、初めてだった。
ただでさえ薄気味悪い雰囲気なのに、夜の闇がその不気味さを増長させているようだ。
屋敷の周りは、闇と静寂が支配している。
僕達以外に音を出すものはなく、明かりはカトウさんの車にあった懐中電灯数本だけだ。
車から降り、屋敷の玄関前に僕達は集まる。
カトウさんが、屋敷の扉に手をかける。
鍵は掛かっていなかった。
玄関の扉が、軋んだ音を立てて開く。
屋敷の中はさらに薄暗い。僕達は、懐中電灯の光と、撮影の時に覚えた屋敷の間取りを頼りに進む。
目的の部屋は…。
例の、開かずの間だ。
足元に注意しながら、通路を進む。
ふと、腕に力を感じた。
振り返ると、僕の腕をマナミさんが握っている。
相当に怖いのだろう、握った手が微かに震えている。
だが、顔は正面を向き、視線もまっすぐ前を見つめている。
健気な人だ。
先頭に立って進むカトウさんも、勇気のある人だと思う。
僕らは、例の開かずの間の扉の前に辿り着く。
ここまで、人の気配はなく、監督の姿もなかった。
だが、この部屋に何かがある。その場にいる誰もが、そう思っていた。
カトウさんは、扉のノブに触れ、鍵がかかっていることを確認する。
扉を叩きながら、
「監督! そこにいるんですか?」
と声をかける。
だが、返事はない。
カトウさんは、扉に耳を当てる。
「…何か。音が聞こえる。…声?」
僕たちの間に緊張が走る。
「こじ開けよう。」
誰かがそう提案した。
頷くカトウさん。
腰に差していたバールのような物を取り出し、扉の隙間に差し込み、力をかける。
メキ…。
腐った板が砕けるような音がして、ドアの鍵が破壊される。
僕達は、壊れた扉を開け、部屋の中に入る。数人の足音が室内に響く。
当然、明かりは全くない。
カトウさんは、足元を照らしていた懐中電灯の明かりを、部屋の中央付近に向ける。

























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